中小通販会社はデータ活用に遅れ
顧客セグメントに応じた対策を推奨
――具体的にデータ活用とは。
三田 顧客の購買履歴を分析し、収益力に基づいてランク分けしてグループごとにアプローチを図ります。例えば、優良顧客に対しては、特別なセット商品や高額商品を販売します。一方、収益力の低い、企業からのアプローチに対して反応の鈍い顧客には、購入しやすい商品をアプローチします。このような顧客には、カタログを送付したり購買喚起のアウトバウンドを行ったりしても非効率ですので、コストを抑えた方法でコミュニケーションを図ります。つまり、顧客層別にどうアプローチするか、どこまでコストをかけるかを考えるわけです。意外に思われるかもしれませんが、大手通販企業を除いて、中小企業でこうしたデータ活用をしているところは非常に少ないのが現状です。これまで、それで済んできたというのもありますが、今後はそうはいかないでしょう。
――優良顧客のセグメンテーションには、RFM分析がありますね。
三田 RFM分析は、瞬間・瞬間で顧客を選別するには有効な手段だと思います。しかし、顧客との関係性を重視すると、少々物足りない部分が出てきます。例えば、RFMのスコアリングでは、先月初めて1万円の商品を購入した顧客と、直近1年間に2回5千円の商品を購入した顧客が同じグループに入る場合があります。顧客との関係性において的確にアプローチをするためには、このセグメントは妥当ではありません。また、過去5年間で10万円の買い物をして、2年間休眠している顧客はふるい落とされてしまう場合があります。統計的には正しいのでしょうが、きちんと背景を分析することが必要なのは感覚的にわかるでしょう。また、優良顧客を見つけ出すのは案外簡単です。先程のように、過去1年でいくら使ったかを見ればいいだけだからです。悩ましいのは、切り捨ててもよい顧客を見つけることです。大手企業なら別ですが、中小規模では顧客リストもそれほど多くありません。この中から有効でない顧客を排除していくのは勇気が必要です。しかし、適切な層に適切なアプローチを行わなければ、最適な結果が生まれないのは事実です。
――顧客リストを増やすためには、新客獲得が必要です。中小や新興の通販企業にそのノウハウはありますか。
三田 通販の大きなメリットの1つに、テストが可能な点があります。カタログやチラシなら常識ですが、訴求のポイントや方法を変えて顧客の反応を見ます。ネット通販でも、サイトの作りを変えてみたり、メルマガの表現を工夫してみたりと、テストを繰り返しながら、効果的なマーケティング手段を探ることは可能です。また、既存顧客の反応がどうかを見ることもできます。経験値を蓄積し、どの顧客にどうアプローチすれば効果的かを学ぶ必要があります。
顧客への積極的アプローチ
アウトバウンドコールを見直す
――ネット通販が主流の時代、Webだけでアプローチするのは大変ですね。
三田 もちろん、1つの手段に固執するのは得策ではありません。ネット専業通販も、今までは(SEO対策などの)技術で対応できましたが、今後は厳しいという話はしました。カタログやTVもECサイトを開設し、情報発信や利便性の訴求を図っています。今後の販促活動には、いろいろなメディア、チャネルを組み合わせることが重要になります。その中でも見直したいのがアウトバウンドコールです。
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