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CS目標はひとまず達成
「顧客の声」活用フェーズに踏み込む

――カスタマーサポートセンターの体制を教えてください。

長島 現在、お買い物相談など購入前のお客様対応を行うセンター拠点として目黒(本社内)、また、修理受付センターと連携し購入後の対応を行う拠点として川越(カーナビ、カーAV機器)、所沢(DVDプレーヤ/レコーダ、ホームシアター、カラオケ、ミニコンポなどの家庭用AV機器)、静岡(プラズマディスプレイ、CS/BSチューナ、家庭用テレビ)の3サポートセンターを設置しています。当社も以前はいわゆる「お客様相談室」のレベルから脱し切れず、1つのセンターでとにかくお客様からの電話を受けていたのが実情でした。それを5年前から順次サポートセンターを拡充し、担当カテゴリーとミッションを明確にしながら4センター共通の指針のもとに応対品質の均一化、応答率向上などのスキルアップに努めてきました。同時にシステム面でもCTI化、IVR導入、Eメール・ホームページ窓口改善を図り、365日体制も確立しました。これら改善の過程で、お客様の声を業務改善や商品企画さらに開発に活かす仕組みが出来上がりました。お客様の声の重要性を経営トップからパイオニア本体の企画・技術スタッフに至るまで認識するまでにようやくなってきたのです。『CS NO.1』をスローガンとして掲げ、一定の評価を得たことでカスタマーサポートセンターとしても1つの目標、つまり、旧来の体質から脱し企業グループのなかで基盤プロセスの1つになることには到達したと認識しています。これからは、いよいよ次のフェーズに入らなければなりません。

――次のフェーズとは具体的に。

長島 お客様の声の重要性に対する全社の認識、基盤プロセスとしての確立を、単に意識の高まりや仕組みだけに終わらせるのではなく、実際の活用フェーズに押し上げていくことです。カスタマーサポートセンターを起点とした全社・グループ各カンパニーへの情報発信・還流の仕組みとしては大きく3段階あります。まず、最新のデータを日毎に発信する「相談データベース」。これはコミュニケータの主観を入れない生データそのものです。しかし、データが膨大すぎてDBへのアクセスの負荷が大きく活用しづらいだろうという判断から、コミュニケータが有用な生の声をセレクトし、グループ各カンパニーの企画、マーケティング担当者に隔週ペースでメール配信しているのが「ホットボイス」。さらに、月に約3万件(4センター合計)入ってくるお客様の声情報を1カ月集計して翌月初めに編集委員会という形で各センターから担当者が集まり、フィードバックすべき情報の抽出や定量的な市場分析データとしてまとめ、月毎に企画、マーケティングだけでなく技術担当責任者や当社役員向けに「お客様の声」として発行(社内ポータルでの報告書)しています。

――配信先の活用度はどうですか。

長島 まだまだ閲覧率が上がらない部分もあります。このため、より見やすく短時間で読めるようにさらに工夫を加えているところです。また、お客様の生の声そのものに対する意識を強めてもらうため、当センターでのお客様とのやり取りのモニタリング体験を提案しています。手始めに4月から自社の各部門社員を順番に最低1時間聞かせていますが、今後各カンパニーの企画、技術スタッフに率先して聞いてもらうように仕向けていきます。さらに、カリキュラム化して当センターでのモニタリング経験を転属や昇格などの条件に組み込むほどの強制力を付けたいと思っています。この促進には、当方からの働きかけだけでは弱く、トップダウンも必要です。人事や各カンパニーの経営統括責任者クラスへの提案を強化し、トップダウンを促すアプローチをしたいと考えています。

――品質改善ではカタログや取り扱い説明書類の見直しなどで顧客の声からの提案の成果が出やすいですが、商品そのものの企画や開発は敷居が高いのではないですか。

長島 電子機器の場合、技術者の思い入れも強いだけにそういう面はあります。しかし、ここを変えていくことなくして顧客志向経営など成り立ちません。そこで、昨年末から始めたのが「一押し活動」です。お客様の声の編集時にキラっと光る、次の商品企画にとくに役立ちそうな題材をピックアップし、パイオニア本体のCRMグループが管理している顧客DBをもとにパーミッションをいただいているお客様に当センターからアンケートなどをお願いし、例えば「こんな機能があればどうですか」といった問いかけをして、その反応結果を商品企画サイドに渡すという働きかけです。パイオニア本体の社長から「お客様の声から早く物づくりの事例を作れ!」と各商品企画グループに檄が飛んでいるだけに、当社のカスタマーサポートセンターからの情報がどれだけ有用かが、まさに試されているわけですが、現時点で次の商品企画に取り上げられている提案が19件、うち3件が実際に採用、4件が目下具体的な検討段階にあります。今後、お客様の声に基づく情報が商品開発や機能にまでフルに活かされる体制が根づくようにしたいですし、それが当センターの究極目標でもあります。

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