――顧客獲得の方法は。
久野木 東京(首都圏)と名古屋(東海)、大阪(近畿)に営業拠点を設けているほか、地方新聞社系の旅行代理店をチェーン化して全国をカバーしています。新規顧客の獲得策は、新聞広告を適宜出して旅行説明会の告知を行っています。提携先が新聞社系なので広告料はほとんどバーターです。説明会では著名な流行作家などを招聘して集客力を高め、帰りがけにパンフレットをお配りします。その後、3営業拠点および提携代理店で電話による申し込み受付を行っています。電話はかけるよりお客様からかかってくるインバウンドが圧倒的ですが、最初は営業に結びつかない相談や世間話も多いです。しかし、当方からセールスじみた話は一切せず、ひたすら「聞く」ようにしています。3営業拠点ではそれぞれでエリアを区分し、各2名ずつ地域コーディネータを配置して電話応対しています。
――電話応対でCTIなどの活用は。
久野木 顧客DBには約5万件のお客様情報を格納していますが、CTIのように即座に端末画面に該当のお客様の情報がポップアップするといったスピードはそれほど必要ありません。むしろコールセンターの機敏性を嫌がる年齢層です。地域コーディネータは聞き役に徹しますから、電話を切る時、「このお客様は一体何をおっしゃりたかったのか判らない」ということもしばしばあります。ただし、応対履歴を常時更新し、担当エリアのお客様の最新情報を把握できるようにしておきます。エリア担当を2名体制にしているのも、たとえ1人が不在でもコミュニケーションに支障をきたさないようにするためです。そして、1回当社のツアーにご参加いただいたお客様が再びご利用いただく比率は70%に達しています。1年に何回も繰り返しご利用いただいている有り難いお客様も多くいらっしゃいます。
採用も報酬もお客様が決めるとなれば
必然的に真の顧客志向が根付く
――海外ツアー業界平均のリピート率はせいぜい10%台と言われているなかで驚異的な高率ですが、秘訣は何ですか。
久野木 シルバー向けに本当にフィットした企画と、良質のサービスつまり添乗員が心を込めたおもてなしに努めればお客様は逃げません。たとえ“浮気”されてもまた戻ってきます。そして一旦戻られたらもう動きません。他所より多少高くても満足を得られるサービスの価値を納得していただけるからです。企画にしても名称だけシルバー向けで中身はそうなっていないものを多く見受けます。大手では現場を知らない企画室がツアーを立案し、添乗員も派遣のケースが多いですが、当社は経理など一部を除き全員が添乗員です。先ほどの地域コーディネータも添乗員が国内にいる時、エリア担当になります。電話を通じてお客様の細かな要望を聞き取り、さらに添乗現場で得たアイデアなどを盛り込んだ企画を自ら作るのです。このため、添乗員つまり社員の教育にはとくに力を入れています。
――どのような教育をされているのですか。
久野木 新入社員は男女とも全員、富士山麓の人材養成学校へ研修に送り込みます。マスコミによく取り上げられているいわゆる“地獄の特訓”コースです。新人にはTOEICでの高得点者も多いですが、まず、ビジネスの基本を植え付け、とくにお客様志向の考え方を頭にたたき込んでもらうのが狙いです。最初は抵抗感を持つ新人もいますが、研修後は満ち足りた顔になって戻ってきます。その後、社内で専任の教育担当者が2年間OJTの一貫教育を行います。そもそも、新入社員を採用する際は、お客様に最終面接をお願いしているのですよ。
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