――海外旅行業界全体の景況はどうですか。
久野木 9.11、追い討ちをかけるようなSARS騒ぎと、しばらく悪い状況が続きましたが、昨年以降、それ以前の状態に戻っています。全体傾向としては、パッケージツアーの中身が変質してきています。ひと口にパッケージと言っても、フリータイムなど素材だけを提供するものと、手作り感覚の本格的なものとの2極化が顕著です。
――御社のスタンスと顧客ターゲットは。
久野木 大手旅行代理店とは全く異なるツアー企画で差別化を図っています。お客様は完全にシルバーオンリー。若い人は逆にお断りしていますが、最初からターゲットをシルバー層に定めていたわけではなく、結果的にそうなったのです。そもそも当社の前身は広告代理店で、海外各国の政府観光局などから誘客キャンペーン企画を請け負っていました。その国の本当に良い所、例えば、フランスでしたらパリ以外の地方にも名所はたくさんあるわけです。それをもっと認知してもらうプロモーションのお手伝いをしていたのです。最も有効な方法は直接現地に行って体感してもらうのが一番良いのですが、当時(約30年前)はパリ抜きのパッケージツアーなどそもそもない。それではと旅行業の免許を取り、観光局とタイアップして自らツアーを組んだのがきっかけで、今では旅行代理業が主体になりました。企画が特殊ですからお客様のターゲットは、既にパリには何回も行っているような海外旅行通で、しかもお金と暇のある層ということで、必然的にシルバーになりました。
シルバー層を“出口”で待つ
日本で最も高い海外ツアー会社
――今後、団塊の世代の大量リタイアでシルバー人口がますます増えるだけに、御社の顧客ターゲットにフィットしてきますね。
久野木 当社の営業はシルバー層の“入口”を狙うのではなく“出口”でお待ちするのが基本戦略です。お客様の平均年齢は70歳以上のご夫婦が中心で、ご主人は現役時代に会社役員をしておられたような方も多く、いわゆる富裕層です。このため、海外旅行にしても、例えば満足していただけるホテルの水準が高かったり、いろいろなご要望も多く、これを満たしていくと金額がかさみます。当社は日本で一番高いパッケージツアー会社と言われていますが、お客様のご要望を満たすコンテンツをあらかじめ料金に含めて明示しているからです。最初の基本料金は安くても現地でのオプションツアーなどに参加すると結局高く付くパッケージも多いですが、当社の場合そういうことは一切ありません。ご高齢のお客様を対象にしているだけに旅行中のケアにはメンタルな部分を含めて最善の留意を払っています。1日の行程は朝9時出発、夕方4時半ホテル着を原則としたり、2連泊を基本にするなど、“ゆとり”を大切にしています。また、日程・内容などから『ゆったり度』を3段階に分けてマーク表示し、コース選びの目安にご利用いただくなど、体力に自信がないお客様にも安心してご参加いただけるようにしています。
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