──自動車保険の市場環境をどう捉えていますか。
城戸 現在約3兆4000億円の規模がある自動車保険市場は、ここ10年ほど衰退傾向にあります。「若者の自動車離れ」もあり、この傾向は今後も続いていくでしょう。このように自動車保険は成熟しきったマーケットですが、本格的な競争原理が働くのはこれからだと思っています。保険市場は長らく規制に守られてきた歴史もあり元来変化に乏しく、また保険という消費者にとってはわかりにくい商品であるがゆえに「情報の非対称性(人々が有する情報の分布に偏り・格差が生じていることを表す経済用語)」が際立つ市場です。近年、ダイレクト(直販)系の保険会社が登場し、そのシェアは年々拡大してはいますがいまだ10%に満たない状況です。ネット普及による市場の変化は、証券や銀行などと比較すると保険はそのスピードが著しく遅いと思います。
──その理由は。
城戸 保険の加入・見直しをするタイミングが、基本的に年1回か生保の場合はもっと長いからです。つまり、証券や銀行のユーザーのように相場や為替を見たり、残高や運用資産をチェックするのと違って、人々が関心をもつ機会が非常に少ない。衣食住や日々の生活に関連する商品・サービスなどと同等に見直す動機が起こりにくいわけです。こうした業界でイノベーションを起こすには、かなりインパクトのある仕掛けが必要です。
──それが、御社をはじめとした新規参入企業による価格破壊ですね。
城戸 既存の代理店型ビジネスに比べ、新規参入企業の多くは通販型のビジネスモデルで低価格を武器にシェアを拡大させています。通販と業務の効率化により流通コストやオペレーションコストを抑え低価格戦略を実践しており、デフレ不況の昨今の経済情勢もこうした戦略にとって追い風となっています。弊社も業界最低水準の保険料に設定していますが、お客様にその「安さ」を認識していただく機会はまだ少ないと感じています。認知度向上のため莫大な広告費をかければ、それを保険料に反映せざるを得なくなります。こうしたジレンマは業界にかかわらず存在しますが、弊社は、そこにソリューションを見出したことがきっかけで開業しました。SBIグループでは、約10年前から「自動車保険一括見積り窓口 インズウェブ」という保険商品の比較サイトを運営しています。年間約100万人が利用するこのサイトには、最も安い保険商品を探すお客様が集まっています。そこで求めらている商品を作れば、必然的に売れると思いました。実際に弊社に現在ご加入いただいているお客様の4割弱が、このサイトを経由しています。
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