──健康心理学とは、具体的にどのような学問なのでしょうか。
山田 働く人が健康に楽しく幸せな人生を送れるよう、メンタル面から健康づくりを支援するための学問です。現在日本では、12年連続で年間3万人以上の自殺者が出ており、この3分の1は働き盛りの人たちです。働くとは、社会的ニーズに辛い思いをしながらも応え、お金を貰って生計を立てることですが、この辛い思い――ストレスを上手くコントロールできずに、うつ病・離職・自殺につながる人が多いのです。そこで、ストレスとは何かを知り、自分自身の状態を確認しながら、自分で適切な対処ができるようになるための、ストレスマネジメント教育が重要になります。私たちは、この普及を推進しています。
──教育内容はどのようなものですか。
山田 基本的な考え方は予防措置です。ストレスに関する正しい知識を理解し、うつ傾向にあると感じた際は認知行動理論に基づいた適切なコーピング(ストレスを評価し対処すること)を行って自己予防できるよう指導します。集団に働きかけることで一度に多くの方々に周知し、職場や地元地域に持ち帰って周囲に伝えていただくことで、心の健康づくりの輪を社会に広げていきます。実際の教育では、汎用あるいは業界・業種に特化した「ストレスドック」を実施します。これは人間ドックのように心の健康状態をチェックするもので、調査票による査定とフィードバックを行うことで、自分のストレス傾向とそれと上手に付き合う方法を認識していただきます。ストレスマネジメント教育では、ストレスの知識以外にも、リラクゼーション(リラックス方法)やアクティベーション(有酸素運動によるストレス解消法)などの実践的行動も身に付けていただきます。
ストレスドックの開発では、業界・業種ごとに現場観察と面接を行い、ストレッサー(ストレス要因)とストレス反応の関係性を独自の尺度で導出しています。これにより各々の業種に応じたストレス度を測定でき、適切な対処が行えるようになっています。これまでに、汎用こころの健康指標(1999)、看護師版(2004)、外国人版(2004)、外国人看護師・介護士版(2008)、ブルーカラー版(2008)を開発、コールセンター版の開発は2年前より取り組んでおり、現在も実証調査・分析を繰り返しています。
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