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 2010年6月号

ネット通販成功の決め手は
『プル型』営業とコールセンター重視

ケンコーコム
代表取締役社長
後藤 玄利氏


健康食品を中心としたネット通販をいち早く手がけ、年商100億円突破を実現したケンコーコム。昨年の不況下でも2ケタ成長を持続している。後藤玄利社長は「ネット通販は“プル”型の営業モデル。お客様を呼び込む情報をいかにWeb上で展開できるかが決め手」と語る。また「バーチャルだからこそ、お客様と触れ合う実在かつ唯一の接点であるコールセンターが差別化のポイント」と強調する。

Profile
後藤 玄利(ごとう げんり)氏
ケンコーコム
代表取締役社長

1967年2月   大分県で地場製薬会社の創業家に生まれる
1989年3月 東京大学教養学部基礎科学科第一卒業
同年4月 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。同社の戦略コンサルティンググループ設立メンバー
1994年5月 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)退社
同年11月 ヘルシーネット(現ケンコーコム)を設立。代表取締役に就任
2000年5月 健康関連Eコマースサイト「ケンコーコム」を立ち上げ
2004年6月 東証マザーズ上場
現在、NPO法人 日本オンラインドラッグ協会(http://www.online-drug.jp/)理事長なども務める

──起業の経緯からお聞かせください。

後藤 バブル崩壊後、混迷期だからこそ新たなビジネス創出のチャンスがあると思い、それまで勤めていたコンサルティング会社を辞め、1994年11月に健康食品の通販会社「ヘルシーネット」を東京・赤坂に設立したのが母体です。私の実家は大分県で90年続く地場の製薬会社なのですが、家庭向け薬品市場はかなり成熟しており大幅な伸長は見込めませんでした。そこで副次的に製造していた健康食品に着目し、ダイレクトメールベースでの単品通販事業に乗り出したのです。60歳から70歳の顧客層をメインターゲットにダイレクトメールを郵送し、コールセンターで受注や問い合わせ対応、アウトバウンドを行う通販スタイルを、その後5年間ひたすら展開しました。

いち早くEコマースに着目
「プッシュ」から「プル」へ転換

──ネット通販へ転じたきっかけは。

後藤 1999年時点で年商3億4000万円までは伸びましたが、健康食品の単品通販では2ケタ違う規模の先行会社が数多くありました。このまま従来のスタイルを続けて先行の大手に追いつき追い越すのは並大抵ではないと思った矢先にEコマースと出会いました。当時、Eコマース自体は注目されてはいましたが、これで徹底的にビジネスを展開するところはまだほとんどありませんでした。しかし私はインターネット上で新しいビジネスモデルが作れるしダイレクトマーケティングも行えると直感し、2000年5月に健康関連商品のEコマースサイト「ケンコーコム」を立ち上げました。

──いち早くネット通販に大きくシフトしたのですね。

後藤 ダイレクトメールベースのダイレクトマーケティングとEコマースのそれとでは、同じ点と違う点があります。一人ひとりのお客様へ直接対応し直接売ることは同じですが、そのセールス手法が異なるのです。ダイレクトメールなど従来のダイレクトマーケティングは徹底的に売り込んでいく「プッシュ型」ですが、Eコマースは逆に「プル型」。とくに、私共が扱う健康食品のようなロングテールのEコマースではそうです。むしろお客様の方から情報を取りに来てもらうことが重要で、それに足る魅力的なコンテンツをいかに整理して提供できるかがポイントです。今、考えれば当たり前と思われるかもしれませんが、当時この違いに気づきいち早く実践した人は、いるようであまりいなかったと思います。

──プル型への早期転換が、数多く生まれたEコマース業者から御社が抜きん出たトリガーだったと。

後藤 周知のとおり、通販では新規顧客獲得のためにダイレクトメールにしても、さらにカタログや新聞・TV広告でも多大なコストがかかります。ところがネットでは基本的にこの経費がかからない。広告費無しでダイレクトマーケティングが実践できれば素晴らしいことです。ただ、最初はわからなくて、ネットでもプッシュ型の広告展開から始めました。ところがプッシュが効かない。ひたすら売り込んでも誰も振り向いてくれません。そこで、少数の商品を勧めるという売り方ではなく、健康食品に関する日本中の情報を網羅し提供できる営業スタイルにしていきました。とにかくケンコーコムにアクセスして検索すれば健康食品のことは何でも分かるようにお客様視点でWebサイトを工夫し、営業プロセスも変えていったのです。


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