──コール/コンタクトセンターの運用やシステムは、まだクラウド環境のエキスパートや知識ナレッジのリソースとは、ちょっとかけ離れている気もしますが。
宇陀 たしかに、まずは社内(あるいはセンター内)のナレッジ化とその共有が進んできたのが現状でしょう。しかし、コミュニティとナレッジ共有の範囲が今後広がっていくことは間違いありません。既に、エンジニアなどテクニカル分野ではエンドユーザーを含めたナレッジ共有が有効に機能しています。やがて、一般のコンシューマプロダクツでも当たり前のようになっていくでしょう。そうなると、コール/コンタクトセンターのイメージもガラリと変わってきます。
──クラウド環境下では依然としてセキュリティを問題視する向きもありますが。
宇陀 コンシューマWebと混在して考えてもらっては困ります。当社のソリューションは完全に法人向けから成り立っていますし、7万2500社におよぶユーザー企業でこれまでまったく問題は起きていないことが信頼性を証明しています。
──Service Cloudの目標は。
宇陀 中期的にSales Cloud、Service Cloudのパッケージサービスと、「Custom Cloud」と呼称しているPaaS(Platform as a Service)事業(SaaSアプリケーションの基盤となるプラットフォーム「Force.com」を提供し、ユーザーがアプリケーションを構築する形態)を、それぞれ3分の1にするのが理想です。とくに日本ではService Cloudのウエイトが低いですから、重点的に強化し比率を引き上げていきます。
IT停滞は景気のせいばかりではない
“サービス”視点への発想転換が必要
──SaaS型CRMをはじめクラウドコンピューティング市場では、今後ますます競合が激化していくと思われますが、御社のスタンスは。
宇陀 むしろ大歓迎です。SaaS型で当社が市場独占とか一人勝ちという言われ方をすることもありますが、こう言われている限りはニッチ市場の域を出ません。先ほども申しましたとおり、全ての企業が今後なんらかのSaaSアプリケーションを使うようになるでしょうから、市場は膨大になります。そのなかで当社のポテンシャルを高めていくだけの話です。CRMに限らず、IT産業はもっと“ボリュームゾーン”にフォーカスすべきだと思います。もちろん高機能・高価格を追求する行き方はありますが、それだけでは今後のユーザーニーズの変化に応えていけず、市場を自ら狭めることにもなるでしょう。現在、ITソリューション市場が停滞しているのは、景気のせいばかりではなく、IT(情報技術)視点からIS(情報サービス)視点でビジネスモデルを本気で考える発想転換の岐路に立っているのではないでしょうか。まさに、ボリュームゾーンにフォーカスする大きなトリガーとなるのがSaaS、クラウドです。そして、クラウド環境での品質や信頼性向上にこれまで培った要素技術を注げば、ボリュームゾーンのなかでITが再び活性化することに繋がっていくのではないでしょうか。
(聞き手・鈴木 信之)
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