──今、クラウドコンピューティングが大きなトレンドになっていますが、各社各様にクラウドと言い出し、混乱している感もあります。御社が捉えているクラウドとは。
宇陀 言葉がクラウドかどうかはさしたる問題ではありません。要は、ITベンダーが完全にモノを作らなければいけない、一方、ユーザーは自分で全て持たなければならないという「所有」のモデルから、必要な時に必要な分だけ使う、ベンダーはそのプラットフォームを提供する「利用」モデルへ移ってきたということが最大のポイントです。コンシューマWebの世界でも相当技術が進化していますが、これを自ら所有しようとする人はほとんどいません。ところが、法人ビジネスになったとたんに全部所有しなければいけない、というのがこれまでの主流でした。保守・運用のコストや労力を含めると大変なことです。そうではなく、もっと柔軟に利用しようというニーズが高まり、その選択肢としてクラウドが脚光を浴びているのです。従来のITにもアウトソーシングとかホスティングの概念があったわけで、これを別に「プライベートクラウド」などという言葉に言い換えなくても、そのままやり続ければいいと思います。クラウドの考え方は各社各様でしょうが、当社のスタンスは、あくまで公共インフラ、ユニバーサルに近い形を目指しています。そのために開発プラットフォームも提供しているのです。
──CRM市場のなかで御社のSaaS型統合アプリケーション「Salesforce CRM」が好調な動きをみせていますが、導入状況は。
宇陀 ワールドワイドでの売り上げは直近のデータで年間約16億ドル。既に7万2500社の企業でお使いいただいています。日本法人の数字は公表していませんが、全体売り上げのざっと10%近くとお考えください。ここ5年の推移をみても毎年50%以上の売り上げアップを続けてきており、伸び率は各国の法人のなかでトップです。
いずれ全企業がクラウドモデルを使う
ニーズは「フロー」から「ストック」へ
──どういう企業に導入されているのですか。
宇陀 ワールドワイドでは中小規模企業が圧倒的に多いです。しかし、日本では最初に日本郵政グループ様をはじめとする大手や官公庁に採用されたこともあって大規模の比率が高くなっています。その分、社数でみると少ないと言えますが大手では1社で10数万を超えるユーザーがいますから、社数の割りにユーザー数が多いのが特徴です。CRMをSaaSで、という新しいモデルを我々は最初から企業のIT部門に持っていき説明しました。すると、IT部門の皆さんは限られたリソースをどう配分したらよいかに悩んでおられ、そのなかでクラウドである部分をカバーしてリソースの集中と選択を図ろうという発想が、我々の予想した以上にまず大手から受け入れられたのです。結果的に大手のウエイトが高くなっていますが、これからいよいよ中堅・中小規模企業へ広がります。現在、ITシステムを所有している企業の全てが、いずれなんらかの形でクラウドのモデルを使うようになると思っています。
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