ネットで再生したCRM
ただ、アナログとのクロスが必須
──CRMが再び注目されているということですね。
宮脇 私は、かねがね『CRMは儲かる仕組みということではなく、企業にとって必要不可欠な基盤であって、これを継続することによって儲かる仕組みにもなる』と言ってきました。ただ、継続しても直ぐには結果は出ません。その間にコストが嵩む。CRMの重要性は分かるが継続するのがしんどい、できまへん! という企業が出た。とくに中小企業ではそうでしょう。そんな最中にネットが登場しました。私はネットによってCRMはもう1回チャンスをもらったと思いました。何故かと言えば、ネットは基本的にコストがかかりにくいし、ワン トゥ ワンのカスタマイズができる。さらにロングテール対応に使えるからです。実際、ネットをベースにCRMを展開してみると、短期間でも売り上げが上がることを実証できるんですよ。ですから今は、『CRMは必要不可欠で、かつ売れる仕組み』だと胸を張って言えるようになりました。売上高の20ないし25%は“売らないコミュニケーションで売りを作る”ことを証明できます。
──たしかにネットのインパクトは大きいものがあります。
宮脇 ただし、ネットだけではダメなんです。顧客サービスにしても、お買い上げの御礼ハガキを送るとか、機会を捉えて電話するとか、アナログ的なフォローを融合したクロスチャネルが有効です。実際、当社のセンターで受託しているCRM業務も、電話オンリーはもはやありませんがネットオンリーもごく一部で、ほとんどクロスチャネルです。
──コンタクトセンター機能との併用で効果が増幅されると。
宮脇 企業は当然ながら、環境変化に応じた“売れる仕組み”を常に追い求めています。現在の環境変化、つまり、新規がとれない、既存顧客を大事にしないと次の展開もみえない成熟市場のなかで、コンタクトセンターの機能がピッタリ当てはまるのです。たしかに、ネットは取り掛かりやすく短期間で効果が期待できますが、ビジネス規模が拡大し顧客も多様化していくのに伴ない、どこかの時点でアナログの力が必要となります。
顧客を最も知るのはコミュニケータ
「ペルソナ」モデルは直ぐ出てくる
──では、CRMをコンタクトセンターにおいて具現化するためには、どこから手を付ければいいのでしょうか。
宮脇 キーは、やはりVOC活動ですが、「活動」である以上は、「集めて」「貯めて」「磨いて」「使う」の一連のプロセスがしっかりと廻っていなければならないことは言うまでもありません。まず、集めるのはコミュニケータの仕事ですが、続いて貯めるにはマーケッターを常駐させる必要があります。例えば、マグロは釣り上げたその場で一次加工しないと鮮度が保てないのと同様に、顧客の声は生モノなのでマッケッターの選択や気づきによる加工が必須だからです。コミュニケータにも出来ないことはないですが、時間的にもミッションとしてもオペレーションが優先されるので、やはりマネージャーとは別にマーケティングに長けたスタッフを配置することが基本だと思います。そして、難しいのは次の磨くです。このプロセスで用いる手法としては大抵、KJ法であったり、テキストマイニングツールの導入であったりしますが、私が強く勧めているのは「ペルソナデザイン」の実践です。
──その手法を具体的に教えてください。
宮脇 ペルソナデザインは最近注目されているマーケティング手法で、自社の商品やサービスにとって最も重要な顧客を
1人ないし数人の人物モデル(ペルソナ)に集約し、その人物に向けた商品・サービスや販促をデザインするというものです。つまり、その企業の最重要な顧客像をよりリアルに創り上げ、そこにフォーカスしてモノやサービスを追求する方が、顧客DBからの属性などによって顧客層をイメージするより確実に売れるだろうという、成熟市場にフィットしたやり方です。実は、このペルソナデザインを実践する場としてコンタクトセンターが最適だと考えています。
|