――インターネット・サービス・プロバイダ(以下ISP)市場は、そろそろ飽和状態に突入したという見方もあるようですが、市場環境をどう捉えられていますか。
近藤 ブロードバンド登場とほぼ同時に起こった強烈な価格訴求、さらにプロバイダが乱立状態だった2002年頃と比べると、勢力図が明確になってきた側面はあると思います。具体的には、NTTをはじめとした通信キャリア系と当社のようなメーカー系のISPに収束されてきたこと、さらにブロードバンド・サービスの主役がADSLから光回線に移行しており、競争の焦点が速度や接続品質から、いかにコンテンツを充実できるかになってきています。利用者人口の推移を見ても、会員獲得競争はこれが“最終戦”かもしれないと考えています。
――単純に会員数の総数だけを見ると、NTTやソフトバンクなどの通信キャリア系プロバイダの方が優勢に見えます。その最終戦を勝ち抜くための施策を教えてください。
近藤 通信会社系のプロバイダは、ひかり電話など「回線+サービス」のセット販売で優位性があり、光サービスの登場以降はとくにその傾向が強まっています。これは、パソコンの買い替えや引越しといった新規加入、乗り換えの契機を捉えやすい戦略です。当社ではそれに対抗するためにサービス・コンテンツの充実とチャネル戦略を強化しています。
光の普及は進んでいますが、現段階ではそのパフォーマンスをフル活用できるコンテンツが不足しているのも事実です。そこで、まずはSo-netが得意とするところのエンターテインメント性の追求を図っています。元来、「PostPet(ポストペット)」に代表されるように“コミュニケーションを楽しむ”ためのサービス開発は高い評価をいただいており、現在はゲームを中心にオンラインでの遊び方提案に注力しているところです。またPostPetは、この秋に5年振りの新サービスを開始すべく、現在はβ版サービスを提供しています。これは、従来のメールサービスから“仲間作り”のためのソーシャルメッセージング機能を加えたものです。エンターテインメント向けコンテンツに関しては、「コミュニケーションからコミュニティ」というネットの楽しみ方を提案していきたいと考えています。
――チャネル戦略の強化については、具体的にどのような取り組みを行っているのですか。
近藤 最近では、サービスの比較系サイトなどネット系の販売事業者経由の申し込みも増えていますが、大きなカギを握っているのは、コンタクトセンターの機能強化だと考えています。
もちろん、既存のお客様のサポートがセンターの中心業務であることに変わりはないのですが、ここ2年ほど、プリセールス(獲得業務)のミッションが大きなウエイトを占めつつあります。実際に、新規申し込みの2割程度は電話での入会です。また当社では、ここ数年で改めて顧客接点の重要性を再認識し、「多くのお客様にたくさんのサービスを長く使ってもらうという原点回帰」をテーマにさまざまな改善に取り組んでいます。
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