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――コールセンターでのやり取りを聞くモニタリングは、副社長をはじめとした経営陣も行っているのですか。

木下 よく聞いています。トップ層によるマイクロマネジメントはあまり好ましくないという見方もあるでしょうが、コールセンターの大切さを会社全体で認識していることを示すためには有効な手段だと思います。また、コールセンターなどの顧客接点は新しい情報を得る貴重な手段でもありますので、経営戦略上でも欠かせない存在であることも全社員に認識させる必要があります。
 最近ではVOC(Voice of Customer)と言われることが多いようですが、カスタマー・ボイスの収集と分析は15年ほど継続している中核事業のひとつです。コールセンターは、例えるならば“耳”の機能ですが、それを“脳”に伝えなければ存在価値は半減します。実際、お客様のご意見とは、多くの場合、対処しているつもりであっても対処しきれていないケースがあるのです。従って、全社レベルでカスタマー・ボイスを毎月レビューして、改善に向けた取り組みのプライオリティを定める活動を行っています。

競合激化、淘汰の時代へ――
勝ち抜くポイントは“人材”にあり!

――クレジットカード業界は、貸金法の改正、グレーゾーン金利の撤廃を契機に業界再編が進むなど未曾有の変化にさらされています。御社の事業や業績にも影響は生じていますか。

木下 グレーゾーン金利の撤廃については、当社は、もともとキャッシング事業は中核ではありませんので収益面へのインパクトはほとんどありません。ただし、今後は各社ともに、当社の主要な対象顧客層をターゲットとした商品やサービスを開発してくると予想されますので、競争は確実に激化するでしょう。それを勝ち抜くためにも、カスタマーエクスペリエンスの訴求は大きな武器になると捉えています。繰り返しにはなりますが、そのカギを握るのはやはり“人材”です。

――現在、多くのコールセンターが人材不足に悩んでいます。そちらの競争も激しくなるのでは。

木下 当社では、日本国内だけでなくオーストラリアのシドニーにも約150名程度の陣容でセンターを稼働しています。これは、品質維持のために極めて有効な手段です。もちろん、キャリアパス制度も用意しています。
 また、コールセンターにおいては、コンサルタントからチームリーダーをはじめとしたマネジメント層に至るまで、お客様対応の重要性を認識する、つまり「アメックスのDNA」を感じてもらいたいと思っています。とくにコンサルタントは、ストレスフルな仕事だけに圧力に耐えられる人間になってもらいたい。よく言うのですが、「(コンサルタントは)自分をアクターやアクトレス、つまり舞台俳優である」と思って、精一杯能力を発揮してもらいたい―会社はその舞台を万全に用意することが役割だと考えています。
 これによって、アメックスのDNAが新しく参加したスタッフにも波及し、お客様に対しては“Satisfied(満足)からDelighted(喜び)、Engaged(つながり)”というコンセプトを実現、強固なブランド力を醸成する。すると、「アメックスで働きたい」という人材も自ずと集まるでしょう。カスタマーエクスペリエンスの追求は、収益面だけでなく人材マネジメントにもいい影響を及ぼすと思います。
(聞き手・矢島 竜児)

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