浅野 1970年代の後半から、CS調査をはじめとしたアンケート分析や各種の統計情報分析を担当してきましたが、近年は製品、サービスを問わず、その内容や品質を企業ではなく顧客が決めるようになりました。また、顧客が自分の意思を表明する風潮が強まり、それに伴って企業への要求水準も飛躍的に高まっています。そうなると、顧客の期待や要求に応えることは企業の売上げや利益に直結します。実際に『CS
No.1』という称号がセールスやマーケティング戦略上、大きな売りになっています。CS向上は、経営の観点からも絶対に無視できない時代が到来しているといえます。
――従来から「CSが向上しても利益は必ずしも比例しない」という指摘がありますが……。
浅野 もちろん、企業の売上げはCSだけで決まるものではありません。消費者にとっては「その企業に対してどの程度お金を使うか」は満足度では決まらないことを念頭に置かなければならないのです。しかし、顕在・潜在を問わず不満要素を放置しておくと、間違いなく顧客は競合他社に移行します。CSの把握と改善活動とは、顧客の声に耳を傾ける―流行りの言葉で言えばVOC活動であり、それを向上施策の中核と位置づけて行うべきと考えます。
――CSを重要なKPIと捉える場合、留意すべき点を教えてください。
浅野 CSとは、イメージに支配されやすい指標で、向上活動に着手したからといって総合満足度が即座に上がるものではありません。例えば、IBMの製品やITソリューションは高額というイメージがありました。企業努力によって競合他社と同等のレベルにはなりましたが、一度ついた“高い”というイメージは改善努力をしても短期間で払拭はできませんでした。一方で、「マニュアルがわかりにくい」といった不満は、改善することで満足度はすぐに向上しました。
このように、CSには「上がりやすい要素」と企業イメージのように「上がりにくい要素」があります。総合満足度へのインパクトが大きいのは、得てして後者であることが多いのです。従って、CSをKPIと捉える場合は、長期的な視野でその推移をモニタリングする必要があります。