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正規/非正規の年収差は2倍――
どう見る?「根拠なき収入格差」

――調査では、スタッフの収入にも踏み込んだ設問を設けられていますね。どのような傾向が出たのですか。

仁田 まず前提となるのは、非正規雇用者は、たとえスキルを磨いてスーパーバイザーになっても、賃金が大きく上がることは少ないということです。契約を更新し続けて長期間就業していても同様です。判例によると、契約が反復更新される場合は「期限の定めのない契約と同等に見なされる」ことがあり得ますが、今回の調査によると、「ほぼ自動更新」というセンターは6割近くに達しています。にも関わらず、顧客接点担当の正社員スタッフの平均年収が約500万円であるのに対し、フルタイムの有期スタッフの平均年収は約260万円です。どこの国でも、正社員の方が非正規雇用者よりも待遇はいいようです。今回の調査では、日本のように非正規雇用者の年収を調べていないので、直接比較は困難ですが、非正規の割合が高いヨーロッパ大陸の国では、正規社員と有期契約や派遣社員、あるいはパートタイムの人の賃金については、同じ業務であれば換算した時給を同一にすることを求める法規制があり、格差を抑える仕組みがあります。

――同じ業務を行っていて、収入格差が倍では、労働者側からも反発がありそうですが。

仁田 収入格差には合理的な部分もあります。一般的に、賃金格差を生む合理的な要因は、年齢、学歴、地域、業務の難易度などです。調査結果では、正社員とフルタイム有期社員の平均年齢差は3歳です。学歴についても、正社員スタッフの方がある程度高学歴の傾向にあります。しかし、倍の格差を生む理由になるほどの違いがあるのか、疑問です。
 格差の1つの背景として、非正規雇用者の声を代表して労使交渉を行う組合や従業員代表制度が日本では少ないということがあります。流通関係では、パートの組織化が進んできているようですが、コールセンターの組織率は低いです。また、国内でコールセンターが急速に発展したこの10年間は、俗に「失われた10年」と言われているように、人材市場は完全な“買い手市場”だったのです。このため若い余剰人材が労働市場に異常にあふれて、労働集約型産業のコールセンターは、そのようなロストジェネレーション世代の若者の受け皿になってきました。これは、コールセンターにおける非正規雇用者の待遇を決定付けた理由のひとつと考えられます。

センターをキャリアの“起点”に――
労働意欲と定着率を高める工夫

――若者の雇用機会はバブル崩壊以前にまで回復したとされています。今後のコールセンターの人材施策でとるべき方向性について、考えを聞かせてください。

仁田 すでに取り組んでいる企業もあると聞いていますが、キャリアアップのためのロードマップを敷くことです。
 いくらコスト最優先の雇用モデルが困難になったと言えども、すぐに方向転換するのは難しいでしょう。そこで、人件費を抑えながら就業者のキャリアも考慮できる施策を考えなければいけません。1つ提案したいのが、“コールセンター業務を起点としたキャリアパス”です。しかも、“転職”がある程度前提となっているモデルです。コールセンターは、短期キャリアの人材を年功賃金を前提とせずに雇用する代わりに、その人材が他業務・業種に転職した場合でも有効なキャリアを持てるよう、育成に力を入れる。資格制度もひとつの手段となるかもしれません。コールセンターで働くこと自体がキャリアの土台になれば、それは現在、働いている有期就業者の救いになり、「働きたい」という有期スタッフの確保にもつながると思います。
(聞き手・石川 ふみ)

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