他業界で進む人材管理見直しの動き
少なくなる「非正規雇用者」の枠
――非正規雇用スタッフが労働力の大半を担う構造の弊害について、どのようにお考えですか。
仁田 最大の問題点は、長期的な視野に基づいた人材マネジメントが困難になっているということです。具体的には、景気回復に伴い、有期契約社員、派遣社員ともに人材確保が難しくなっています。とくに都市部では枯渇しているといっても過言ではない。1990年代に請負社員など非正規社員比率が急拡大した製造業では、徐々に正社員化の流れが本格化しています。
こうした状況下で、顧客が満足する対応品質を提供できる人材を、安定かつ長期的に確保できるのか。現在の雇用モデルでは難しいと思われます。
――では、今後、コールセンターも正社員化が進むとお考えですか。
仁田 製造業の場合は、工場の人手不足が製品の品質低下につながり、売り上げに直接的なインパクトがありますが、コールセンターはリソース不足でサービス品質が劣化しても短期的にはほとんど影響がありません。このため、この業界ですぐに正社員比率が高まることにはならないかもしれません。しかし、長期的にはどうでしょうか。
また、正社員は法的な雇用保護が強く、経営側にとっては、一度雇用したら解雇や異動が難しい。業務量による必要人員数の変化が激しいコールセンターのような部署では、雇用リスクの少ない非正規社員の雇用を進めざるを得ないという事情もあります。しかし、今回の調査で「非正規社員の採用理由」について聞いたところ、「景気変動などへのバッファー」という回答はわずか4〜6%で、約60%は「コスト圧縮」としています。このような「コスト最優先」で、非正規社員を短いスパンで回転させるという雇用モデルでは、確保も教育も難しく、組織そのものの限界が近いと思われます。まさに今こそが、人材施策を考え直す時期です。人事を見直すということは、コールセンターは労働集約型であるだけに「組織全体の方向性を見直す」ことになると思われます。
――調査を終えられて、今後日本のコールセンターはどのように変化すると思われますか。
仁田 コールセンターのマネジメントは、ローコストの追求かハイクオリティ追求かという、二極分化が進む可能性があると思います。どちらを推進するかは、各企業がそれぞれの方針に基づき選択するものです。ローコストを追求するのであれば、(オフショアが難しいので、どこまで続くか疑問もありますが、)現段階ならば、人件費の安価な地方拠点での運営拡大や在宅オペレータの活用を進めるでしょうし、ハイクオリティを追求するのであれば、長期的な雇用を前提とした待遇の見直しや正社員化が進むと思われます。
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