基本的には広告だけで、後はクチコミを活用していただくだけです。プロモーションそのものを行うのではなく、その戦略を立てる素材として利用してもらうことが最大の狙いです。従来は、売れ筋商品のデータは店頭のPOSから収集するだけでした。しかし、@cosmeでは、どんな年代の人が買っているか、どの層に評判が良いか・悪いかが把握できます。これを基にプロモーション戦略を立てれば、適切なマーケット層に適切なアプローチが可能です。アンケートやグループインタビューに際しても、どんな属性の人か、どのような嗜好を持つ人かを絞り込んだパネルを用意できますので、高い品質のリサーチが行えます。
吉松 1999年の立ち上げ当初は、「ネットのコミュニティなんて悪口しか書かれないだろう」という反応が多かったのは事実です。そこは、先ほど説明した運用ルールの徹底で回避しています。レビューの数が増えると、メーカーも消費者がそこに集まるとわかってくるので、最近では積極的に商品画像などの素材を提供してもらえるようになりました。また、Yahoo!やMSNなどの大手ポータルサイトにも情報提供しています。メーカーからすれば、@cosmeに情報を出せば他のポータルにまで情報が行きわたるという認識を持ってもらっており、その面からも信頼獲得はできていると思います。
店頭の専用端末でレビューを参照
店員のカウンセリングを支援
――消費者の声は、メーカーだけでなく、販売チャネルでも利用できそうですね。
吉松 店頭支援にも注力していく考えで準備を進めています。@cosmeでは通販も行っていますが、化粧品の9割は店頭で購入されているのが現状です。ここを支援することで、業界の活性化につなげられると思います。例えば、消費者は@cosmeや雑誌の情報を参考にし、店頭で商品を購入します。しかし、店頭で気になった商品の評価を家に帰ってからネットで調べるのは手間がかかります。そこで、店頭に@cosmeに接続できる専用端末を設置し、気になった商品をすぐに検索できる仕組みを整えています。
また、店員支援も視野に入れています。ドラッグストアの店員は、メーカーが主催する新商品説明会があっても時間の都合で頻繁には参加できません。そうなると、自然と個別に訪問してくるメーカーの営業マンと懇意になり、そのメーカーの商品に知識が偏ります。結果、消費者は、自分の肌に合うかどうかもわからない商品を勧められるままに購入することになります。これでは顧客満足にはつながりません。専用端末があれば、その人の年齢や肌質をもとに、どの商品が好評かを見極めてカウンセリングし、適切な商品を勧めることができます。
――メーカーから小売店まで化粧品業界全体を支援できるわけですね。さらに、今後はどのような計画がありますか。
吉松 化粧品業界には、流通データを統括する「プラネット」と呼ばれる業界VANがあります。ここで管理している商品コード(JANコード)と@cosmeの商品IDをリンクさせていますので、店頭からすぐに情報を呼び出せるようになっています。これに、RFIDによるユーザー情報を加えれば、どこで誰が何を買ったかの情報を@cosmeに取り込むことが可能です。POSデータだけでは、「どこで何が売れたか」までしか把握できませんが、クチコミ情報までリンクすることで、すべての情報がつながり、活用の可能性が広がります。これまで化粧品は、イメージとブランド戦略で売ってきました。しかし現在は、消費者が賢くなり、本当に自分にあった商品を選ぶ時代です。そこでは、クチコミに含まれる消費者の本音を上手く活用することが重要になります。情報ネットワークを強化することで、さらに業界の活性化を支援できると確信しています。