――センター運営の現在の課題は何でしょうか。
楠 今後も口座数増加に伴うコール量増加が見込まれるため、応対業務の効率化は必須課題です。昨年はWebサイト充実によるeセルフサービスでコール量を抑制したり、アウトソーシングを有効利用して、“量”のカバーを中心に取り組みましたが、今年は“質”を追求した上で効率化を目指します。具体的には、内部・外部研修などにより応対スキルを向上させオペレータ1人あたりの1日の応対件数を伸ばしたいと考えています。現在平均的なオペレータの1日の応対件数が50件であり、優秀なオペレータは1日60件対応しています。知識や応対スキルの向上を図ることで、エスカレーションや回答のための調査時間を減らし、オペレータの平均応対件数を50件から60件に底上げしたいです。そうすることで、トータルの応対件数を20%増加させることができます。
――そのための具体的な取り組みは。
楠 細かいケアや各種研修の徹底につきます。そもそもコールセンターにおける業務効率化やクオリティ向上は、大改革により一気に解決できるものではなく、スタッフ1人ひとりの地道な努力の積み重ねによるものだと思っています。ですから、個人の努力の効果を最大に発揮するため、各自が徐々に積み上げたスキルを全員が共有できる環境を構築したいと思っています。
例えば、弊社の場合、お客様の資産運営に関わる事業を展開しておりますのでクレームが激烈になるケースがよくあり、その度に精神的なダメージを受け作業効率を落とすオペレータが多くいました。これを現状では各オペレータの自己解決に任せていますが、例えばベテランオペレータによるマインドケアの指導などで、全オペレータが精神回復方法を共有し、精神ダメージによる効率低下を防止したいと考えています。どんな時でも冷静な対応を維持し、最後は円満に電話を切れるようなオペレータの育成を目指します。
CS調査を査定に活かす仕組みや
サービス向上を意識した組織作りに専念
――一方で、センター全体のクオリティ評価はどのように行っていますか。
楠 今年から、顧客満足度(CS)調査を定期的に行うようにします。これは“お客様の立場に立ったサービス作り”という意識を会社全体で統一して持ち合わせていくためのものです。このCS調査をコールセンターでも活用し、さらに内容を深めることで、査定や評価にフィードバックできる仕組みを作る予定です。また、オペレータのマインド設定や指標も、お客様第一主義の発想のもとで作っていきたいと思っています。
――楽天グループという強力なバックヤードがあるため、今後の成長も期待できますね。
楠 今、ネット証券業界には“大衆化”という大波が来ています。この波に乗れるか否かが成長のキーになっていると言えるでしょう。弊社の場合は「楽天」というチャネルを持つことで優位性がありますが、一方で銀行というチャネルを通じた顧客獲得手段も解禁されました。弊社も新生銀行とのアライアンスを皮切りに、今後も銀行窓口を増やし、積極的に顧客拡大を促進する方針です。問い合わせ数の増加傾向はまだまだ続くため、オペレータの増員やトレーニングの強化、指標管理の徹底など体制強化に取り組むことで、良質なサービスを提供できる内部組織を作りたいと思っています。
(聞き手・石川 ふみ)
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