――証券知識のない顧客層の増加はコールセンター運営にも影響していますか。
楠 この1年間、新規のお客様は30代前半を中心に増えており、楽天証券会員の平均年齢は43歳から40歳を切りました。単に年齢層が低下したというだけではなく、初めて株式投資をするというお客様が増えていますので、問い合わせを受けるオペレータに求められるスキルも変化しています。例えば、以前はお客様とオペレータは同等の証券知識を持っているということがコミュニケーションの前提となっていましたが、最近は証券用語の知識が無いお客様が増えているためコミュニケーションが円滑に進まないという状態がよくあります。そういうお客様に対応するために、専門用語を使わない説明ができる、または手短にわかりやすく専門用語を説明した上での回答ができるという応対スキルが身につくよう教育しています。
応対時間最適化と部分的な外部委託で
3割以上の放棄呼率を1桁に抑制
――電話応対の状況についてお聞かせ下さい。
楠 現在、オペレータはスーパーバイザー(SV)など管理者を除き約30名います。先ほど説明したWeb改革などによりコール数をできるだけ抑えるようにしましたが、それでも受電数は増える一方で、30名のオペレータでは毎日2000件の電話に十分対応しきれず、呼損が30〜40%の時もありました。というのも、営業時間が9〜21時であったため、シフトパターンを9〜18時と12〜21時の2種類設定していたのですが、コールピークは証券取引が行われている9〜15時であるため、どうしても午前中のコール取りこぼしが避けられなかったのです。そこで、今年1月から営業時間を9〜18時に短縮しました。これにより、全営業時間においてオペレータのフル対応が可能になり、呼損は約10%減りました。
――営業時間の短縮に対するクレームは。
楠 数件ありました。営業時間の短縮をサービスレベルの低下と捉えるお客様もいらっしゃったようですが、当センターとしては9〜15時という証券会社にとってのコアタイムのサービスレベルを上げるということを最優先に、この施策を採ったのです。コアタイムのカバーを完全にできずして、ただ営業時間が長くてもサービスレベルが高いとは言えません。今後、体制の強化が進めば元の時間帯に戻す、さらには24時間の顧客サポートを行うということも視野に入れていますが、今はまだその段階ではないと考えています。
――呼損をカバーするためには、オペレータを増員するのが一番早い手段なのでは。
楠 弊社の場合、外務員の資格を持った証券取引の知識を持つオペレータが必要なため、顧客の急増に合わせ増員するという単純な対処をとることができません。ただし、2月下旬からお客様登録が未完了である方からの一般的な問い合わせは沖縄にあるアウトソーサーへ委託しました。これにより呼損率はさらに10%抑制することができました。また、テクニカル的な問い合わせで専門的な知識が必要なものについても外部委託したヘルプデスク専用オペレータにエスカレーションしています。システムに関する問い合わせのほとんどは、弊社オリジナルのトレーディング専用ソフト「マーケットスピード」に関するものです。ソフトの操作に関する質問には社内オペレータの知識で十分足りますが、お客様のPC設定やネットワーク環境などが関係する問い合わせになると専門家でなければ解決できないため、外部委託に踏み切りました。
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