本日はLTE-Advancedの現状とその後継となる5Gへのノキアの取り組みについて話して参ります。まずLTE-Advancedから見ていきましょう。
LTE-AdvancedでLTEに付加された新たな要素技術でまず挙げられるのがキャリアアグリゲーション(CA)でしょう。2013年に初めて商用化されたCAは、異なる周波数帯の10MHz幅のLTE搬送波を2つ束ねて150Mbpsの最大通信速度を実現するものでしたが、今年に入って2つの20MHz搬送波を束ね最大300Mbpsを実現するシステムが商用化されました。来年には3バンドのCAによる450Mbps、2016年には4バンド(あるいは4×4MIMOを実装した2バンド)CAによる600Mbpsデータ通信の実現が見込まれています。
見逃せないのは、CAが通信速度の向上だけでなく通信容量の拡大にも貢献できることです。
LTE基地局のカバレッジにおいては、アップリンク(端末から基地局)の電波の到達距離がネックになっていますが、例えば2.1GHz帯と800MHz帯でCAを組み、2.1GHz帯より電波が飛びやすい800MHz帯をアップリンクに使うことで2.1GHz帯のカバレッジを800MHz帯と同等にまで広げて、容量拡大を実現することも可能です。
もう1つ、LTE-Advancedで付加される要素技術にセル間干渉の低減があります。LTEでは干渉が大きくなるセルの境界付近での通信速度の低下が問題になります。この対策は標準ではあまり規定されておらず、ベンダーの仕様に委ねられているのですが、ノキアではトラフィックがあまり混んでいない場合、周波数(リソースブロック)をセルに固定的に割り付けるマルチセルスケジュラーでこれに対応しています。LTE-Advancedでは、セクター間を協調させるCoMPが標準化されており、特にアップリンクで大きな効果があることからイベント会場などでの活用が期待されています。
LTE-AdvancedではLTEをさらに高速・大容量化するだけでなく、IoTを想定したマシン間通信(LTE-M)やデバイス間の直接通信(LTE-D)、移動通信網による放送(LTE-B)、パブリックセーフティ用途の業務無線、車間通信など新しいユースケースを実現するための技術仕様が、アンライセンスバンドの利用技術(LTE-U)などとともにリリース12/13で検討されています。
5Gでは、LTE-Advancedと一部重なる部分がありますが、センサーネットワークやホームシステム、自動運転、ロボットの遠隔制御、仮想現実など多様なユースケースが想定されており、これらを踏まえて要求条件の議論が世界各国・地域の推進組織などで進められています。ノキアでは5Gでは10Gbpsのピークスループット、10年以上電池の交換が不要な低消費電力化、1m秒の低遅延化が5Gの要求条件の重要な指標になると考えています。
この10Gbpsの通信速度の実現には現在は携帯電話で使われていない高い周波数を用いた高密度セルラーシステムを実用化する必要があると考えられます。ノキアではこの新無線アクセスシステム(新RAT)と、4Gあるいはその発展系のシステムを組み合わせたものが5Gになると考えています。この新RATは3〜30GHzのセンチメータ波であればLTEの進化系の技術が使えると考えられますが、30〜300GHzのミリ波帯になると低クラスMIMOなど比較的シンプルな無線技術を使いビームフォーミングで距離を稼ぐ従来と異なる発想のシステムが必要になってきます。ノキアは新RATをこの2つに分けて開発しており、後者をNull CP Single Carrierの名称で提案しています。
また、5Gで想定されている低遅延のサービスを実現するにはレイヤ2による回線提供やローカルGWを活用した新しいネットワークアーキテクチャが必要になると考えられます。ノキアでは2020年、それ以降を視野に入れた技術開発に積極的に取り組んで参ります。
(文責・編集部)