今日はNECのNFV/SDNへの取り組みについてお話しいたします。
当社は2009年に仮想化IMSの開発を開始するなど、NFV/SDNに早い時期から取り組んでいます。特に仮想化モバイルコア(vEPC)においては障害時の自動復旧機能(オートリカバリー/オートヒーリング)の早期実用化により安定性のあるシステムとして高い評価をいただいており、13年12月に運用が始まったミャンマーの国営通信会社のLTEのネットワークには当社のvEPCが導入されています。おそらくこれは世界初になると思います。
NECはNFV/SDNのビジネスを世界規模で展開しており、SDNを中心に約200の企業や公共インフラで当社の製品が導入されています。NFVにおいてもNTTドコモが14年に実施したvEPCのクロスベンダーPoC(実証試験)をはじめ、ポルトガルテレコムやテレフォニカなど多くの通信事業者のプロジェクトに参加しております。
NECのNFV/SDNソリューションの特徴の1つにOSS/BSSレイヤを含むフルセットのソリューションを提供することで、通信事業者のクリティカルな業務課題の解決に対応できることが挙げられると思います。OSS/BSSでは既存ネットワークとNVF/SDNが混在した場合、システム運用に複雑な問題が生じます。NECでは子会社OSS/BSSベンダー米国NetCracker Technology社の持つ経験・ノウハウを活かし、お客様の多様なニーズに応えていきたいと考えています。
当社がNFV/SDNの分野で重視しているポイントの1つはオープンなエコシステムを構築することで、お客様のニーズにタイムリーに応えられることです。ご存知の通りNECはコンピューターと通信の双方を手掛けており、NFV/SDNの全領域を自社製品で揃えることも可能なのですが、この分野ではパートナーと連携することでお客様が迅速にサービスを提供できるようにしたいと考えているのです。これを実現するため、製品には標準に準拠したインターフェースを実装しています。
NFVの仮想化環境はOpenStackでほぼ固まっていますが、当社は自らOpenStack製品を開発することは考えていません。オーケストレーターについては、自社製での提供はもちろん、自社製以外の製品との組み合わせも視野に入れています。パートナー製品を有効に活用し最良のNFV/SDNを提供していきたいと考えているのです。またオープンなエコステムの前提となる標準化活動にも積極的に参画しています。
もう1つ当社が注力しているポイントはE2Eのオーケストレーションを提供することです。当社ではNFV/SDNの技術そのものは確立しており、課題はいかに既存のネットワークを有効活用してNFV/SDNに持っていくかにあると考えています。そのためにはE2Eのオーケストレーションが不可欠です。
NFV/SDNを円滑に導入するには、これを実際にネットワークの保守・運用に携わっている方に分かりやすく、使いやすいものにする必要があります。保守を担当される方が仮想化環境の中で実際に何がどう動いているかを統一的に「見える化」することはその有力な手法の1つですが、その鍵となるがE2Eのオーケストレーションなのです。
リソースに一定の余裕を持たせておき、障害発生時に自動的に予備系を構築して切り替えるvEPCのオートヒーリング機能は、従来の24時間365日の保守体制から定期的な点検・保守に切り替えることを可能にしますが、これにもオーケストレーションが重要な役割を果たします。E2Eのオーケストレーションの本質はトランスポートやデータセンターのSDN、NFVを個別に最適化するのではなく、全体を最適化することにあります。これによりTCO(総所有コスト)の削減、付加価値の創造が可能になるのです。NECでは、お客様のTCO削減、新しい価値の創造、顧客体験の向上に向けNFV/SDNの展開に力を入れて参ります。
(文責・編集部)