私どもエヌ・シー・エル・コミュニケーションは、2012年に当社が総代理店となった米国のスイッチソフトウェアベンダーPica8のソリューションを中心に、SDN分野のビジネスを手掛けています。本日は狭義のSDNの範疇からやや外れるところがありますが、SDNの主要な導入目的であるCAPEX(設備投資コスト)/OPEX(運用コスト)の削減、アジリティやスケーラビリティの向上を実現する、新たなデータセンターネットワークの構築手法をテーマにお話しします。
まず、設備コストの削減に大きく寄与することが期待される「ベアメタルスイッチ」と「スイッチOS」の話から始めたいと思います。
ベアメタルスイッチというのは、スイッチOSを搭載せずにハードウェアプラットフォームだけで販売されるネットワークスイッチです。
多くは1U(ユニット)の筐体にブロードコムのスイッチチップセットやPowerPC/x86系のCPUなどを搭載する形で作られ、これに私どもが扱うPica8の「PicOS(ピコス)」など、標準規格に準拠したスイッチOSを導入することでネットワークスイッチとして使用できます。スイッチチップメーカーによるリファレンス(作成仕様書)の公開を機に参入メーカーも増え、今後技術革新や製品価格の低廉化が進むことが期待されています。
当社ではベアメタルスイッチとPicOSをセットにした「ローディングモデル」も販売していますが、PicOSを単体で購入してお客様自身でベアメタルスイッチにロードしたご利用も可能です。
この際に例えばL2の機能だけを使用する場合などは、より安価なライセンスフィーでご利用いただけます。こうした柔軟な導入形態が選択できることもベアメタルスイッチのメリットの1つです。
またPicOSは、それぞれの機能をLinuxのアプリケーションとして実現しており、エンジニアにとっては扱いやすいものになっています。OpenFlowのサポートなど、次世代ネットワークの構築にも対応できる拡張性も特徴といえるでしょう。
ところでSDNの目標の1つに運用の自動化によりOPEXを削減することが挙げられますが、ベアメタルスイッチ/PicOSの環境でも運用の自動化が、かなり高いレベルで実現されています。
例えばPicOSの場合、スイッチOSの標準規格の1つONIE(Open Network Install Environment)によりOSのインストールやバージョンアップを行い、PicOSの機能であるZTP(Zero Touch Provisioning)により初期設定やアプリケーションのインストールを行うことができます。またLinuxの管理技術のChefを使って設定変更・バックアップ、構成管理などを行うことができるため、運用管理を自動あるいは半自動で実現することが可能です。
ベアメタルスイッチとPicOSを組み合わせたソリューションで特筆される点は、従来のサイロ型ではなく主にCLOSネットワーク(IPファブリック)という新たなネットワーク形態で使われていることが挙げられます。
これは2段構成のマルチパスネットワークで網内の通信すべてがL3で行われます。L2 over L3(XLAN)に対応しやすいことも大きな特徴で、特に日本では大半がこの形で導入されています。特にデータセンター内のトラフィックの増加に対応しやすいこともCLOSネットワークの特徴です。ベアメタルスイッチ/PicOSによるCLOSネットワークは、コストだけでなく機能面でもデータセンターで求められる要件を満たしているといえるでしょう。
OpenFlowをサポートしているので本格的なSDNの導入にも対応できます。海外では最適箇所のみにOpenFlowを導入し、L2/L3ネットワークとSDNを共存させる形で運用されている事例も出てきています。当社はこの新たなソリューションの提供を通じてデータセンター事業の競争力強化に貢献して参ります。
(文責・編集部)