第14回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
NFV実装へ「既存網との連携」の壁 物理環境と仮想環境の共存が鍵に
ジュニパーネットワークス サービスプロバイダービジネス統括本部 リードセールススペシャリスト 高橋利臣氏

ネットワーク機能を仮想化するNFVには、多様な効果が見込まれる反面、パケット処理能力をどう担保するのか、既存インフラといかに連携するかなどの課題がある。ジュニパーネットワークスは、専用ハードウェアで構築する物理環境と仮想環境を共存させる「ハイブリッドアーキテクチャ」でこれを解消。NFVを導入する通信事業者を支援していく。

 2015年にNFVは、まさに実装のフェーズに入りますが、商用展開に向けて解決すべき課題はまだ残されています。それに対するジュニパーの取り組みを今回はご紹介します。

 NFVには様々なユースケースがありますが、中でも早い時期に導入が見込まれるのがvCPE(宅内通信機器の仮想化)、サービスチェイニングです。ARPUを向上させるサービスを迅速に導入するためにNFVを活用したいと考えている通信事業者が多いのです。

 一方、通信事業者の多くが課題と考えているのが、OSS/BSSや既存ネットワークとNFVとの連携です。現在の運用スキームとの互換性を確保することが重要になってきます。

 もう1つ、仮想化の技術をどのような目的で使うのかという点も大切なポイントです。NFVにはハードウェアの抽象化、柔軟性の向上や自動化など様々な効果がある反面、汎用ハードウェア上で稼働させるため、専用ハードに比べて処理能力が犠牲になります。しかし、通信事業者のネットワーク基盤には、柔軟性・敏捷性とハイパフォーマンスの両方が求められます。

 この二律背反の要件を満たしていくために、ジュニパーは「ハイブリッドアーキテクチャ」の実現を目指しています。ハイパフォーマンスの要求に対しては、引き続き独自ASICの開発を進めていきます。一方、柔軟性・敏捷性の実現に向けては、サービスルーター「MXシリーズ」の仮想化に着手するなどソフトウェアへの投資も行っています。つまり、ハードウェアのさらなる進化と仮想化への投資をともに進めて、両者を融合させていくのです。

 どのようにミックスするのか。サービスチェイニングを行う場合に、多くのユーザーが共通に使う認証やファイアウォール機能等はハイパフォーマンスな統合型ゲートウェイ、つまり専用ハードウェアで提供し、一部のユーザーが求める機能や需要の予測が難しい機能については仮想化基盤上で提供するのです。このように物理環境と仮想環境を共存させることで、スケーラブルなプラットフォームを実現します。

物理環境と仮想環境の共存
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 ジュニパーがMXシリーズをベースに開発した「サービスコントロールゲートウェイ(SCG)」は、SDNコントローラである「Contrail」と連携して、仮想化基盤上でサービスチェイニングを実現します。まさに、物理環境と仮想環境を共存させながら、ARPUの向上を実現し、かつ既存の物理網やOSS/BSSとの親和性も確保するものです。

 また、仮想ルーター「vMX」はルーターの基本的な機能に加えて、vCPEやvBNGもサポートしており、このvMXによってSCGの機能をクラウド上で実現してマルチテナント型のサービスチェイニングを行うことも可能です。

 もう1つ、NFVで重要な点がオープン性です。我々はこれを重視した開発を進めており、標準的なプロトコルとオープンなAPIを経由して、当社のスイッチ/ルーター、Contrailと他社製品とを連携できます。ジュニパーはネットワークに特化したベンダーであり、NFVを実現するには我々が提供できないコンポーネントが多数あります。そこは、様々なパートナーとエコシステムを構築してオープンなNFV基盤「Contrail Cloud」を実現していきます。

 さらに、NFV実装をサポートする取り組みとしてDevOps(開発・運用部門が連携して行う開発手法)を実現するためのソリューションも提供しています。新規導入する機器の検証期間を短縮するためにクラウドでの検証環境を提供したり、Junos OSの変更なく新たなラインカードを迅速に導入できる仕組みを用意しています。また、クラウドの自動化ツールの活用や、NFVリファレンス基盤の提供にも取り組んでいます。

ジュニパーのNFVビジョン
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 このようにジュニパーは、「物理環境と仮想環境の共存」「パートナーとの共創」そして「DevOpsの実現」の3つの取組みを中心に、引き続きNFVソリューションの開発を進めていきます。

(文責・編集部)

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