近年は、ARPUの伸び悩みをどう打開するかが通信事業者の大きな課題となっており、OTTとの連携などの新しいビジネスモデルの導入によって収益を確保しようとする動きが広がってきています。汎用的な従来型サービスからパーソナライズされたサービスを提供し、カスタマエクスペリエンスの向上により収益拡大を実現しようとする事業者も多くなっています。
HPでは、クラウド、ビッグデータからPC、ノンストップコンピュータに至る幅広いリソースを活かし、新時代の通信事業者ニーズに応え得る多彩なソリューションを展開していきたいと考えています。ここでは、我々が日本で中心的に展開しようとする(1)ネットワーク仮想化(NFV)、(2)バーチャルコア、(3)SIM管理、(4)ビッグデータの4分野の代表的なソリューションを紹介します。
通信事業者が(1)のNFVの導入を進める狙いには、オープンな標準ソフトウェアの採用により多数のベンダーの参入機会を増やしコストダウンにつなげることや、迅速にサービスを提供するアジリティの向上などがあります。
HPはNFVの基盤となるHP Helionに代表される仮想化基盤、クラウドシステムにも力を入れていますが、昨年6月にNFVの中核となるオーケストレータ「NFV Director」の提供を開始しました。これは複数の仮想化されたネットワークの機能モジュール(VNF)を管理してネットワークサービスを実現するコントローラの役割を果たすものです。
NFVでは通信ネットワークを構成する様々な機能モジュールがVNFとして仮想化されますが、その中で脚光を浴びているものにIMSやPCRFなど多くの機能モジュールで構成されているコアネットワークの機能を仮想化したバーチャルコアネットワークがあります。HPは、このような仮想化したコアネットワークをHP vCoreとして提供します。これは、vEPCをはじめvIMSやvPCRFなどのVNFを集約したものです。
vEPCなどの導入は大手の通信事業者でも進められていますが、我々はHP vCoreがMVNO(仮想移動通信事業者)/MVNE(MVNO支援事業者)のビジネスにも活かせると考えています。
現在多くのMVNOが携帯電話事業者のネットワークとL2接続を行い、コアネットワークの機能の一部、例えばポリシー管理や課金管理を行うPCRFを自ら持つことで独自のサービスを展開しています。これをNFVで構築すれば、Linux上で手軽に運用することが可能です。HPは携帯電話の加入者管理を担うHSSを北米を中心に展開しており、これをVNF化したvHSSはLinux上でも円滑な動作が可能です。MVNO/MVNEのお客様にも使っていただけるようになると期待しています。
IoTやM2Mは通信事業者をはじめ多様なプレイヤーにとって非常に大きな成長が見込まれる事業分野です。この展開の第一歩として(3)のSIMの管理、特に、いかにして非アクティブなSIMを減らしてTCOを削減するかが大きな課題になります。HPのDynamic SIM Provisioningは膨大な数のデバイスのSIMのライフサイクルを管理することでコスト削減を実現できるソリューションです。
通信事業者では、(4)のビッグデータが、ネットワークの効率的な運用、カスタマエクスペリエンスの向上による解約防止、不正利用の発見などに活用されています。HPのTelco Big Data Analytics(TBDA)というソリューションは、こうした通信事業者のニーズに広く対応するものです。Wi-Fiによる位置情報との連携によりO2Oの分野で利用されるケースも出てきています。
HPでは、通信事業では今後ネットワークの変革によるフレキシビリティの向上とコスト抑制、ビジネスの変革による収益向上の2つで変化が進んでいくと考えています。HPはIT技術とテレコムにおけるワールドワイドでの経験・実績を融合させ、この変革に貢献できるソリューションを提供して参ります。
(文責・編集部)