固定電話は100年かけて10億の場所をつなぎ、その後の10年で携帯電話が50億の人を結びました。さらに5年後の2020年には500億のモノがネットワークにつながるようになると我々は考えています。つながることでメリットの生じるデバイスがすべてネットワークに接続され、新たなユースケースが様々な産業分野に大きなビジネスチャンスをもたらすことになるでしょう。
エリクソンはこうした変革で生まれる社会を「ネットワーク化社会」と名付け、実現に向けて様々な取り組みを行っています。今日はその鍵となる技術コンセプト「プログラマブル(プログラム可能な)ネットワーク」をテーマにお話しいたします。
この変革を実現するためには、通信ネットワークに現在よりも格段に高い能力が求められます。例えば20年代に実用化が見込まれる第5世代移動通信システム(5G)では、現行のLTEの1000倍のネットワーク容量、100倍の同時接続数、1ミリ秒クラスの低遅延などの非常に厳しい要求条件が議論されています。
ここで重要なのが、ユースケースあるいはそれを利用する産業分野ごとに、リクワイアメントが大きく異なることです。自動車の衝突回避システムのようなアプリケーションの場合は遅延が非常に小さく、極めて安定した通信が不可欠です。ビッグデータのセンサーネットワークの場合は通信速度や遅延に対する許容度はかなり広いのですが、省電力性やコストの面で厳しい条件が課せられます。このほか、広いエリア、高いスループット、高度なセキュリティ、高精度な位置情報などを必要とするアプリケーションもあります。
要求条件が異なるこれらのユースケースごとに設備を設けていたのではスケールメリットは出ませんので、1つのネットワークが多様で異なるリクワイアメントに対応しなければなりません。これを可能にするのが「プログラマブルネットワーク」です。
具体的にはどのようなものになるのでしょうか。例えば、5Gでは新しい無線アクセスだけなく、既存の2G/3G/4G、Wi-Fi、固定通信なども利用されることになると考えられます。こうした多様なアクセスはフロントフォール/バックフォール、コア網、トランスポートを通じて1つのネットワークを形成します。これにNFV/SDNを適用することでプログラマビリティが実現されます。
こうしたネットワークでは機能を柔軟かつ迅速に変更できます。また、用途に応じて機能を適切にスライシングして提供することも可能になります。サービスプロバイダーなどの他の企業がネットワークの機能を活用してサービスを提供するためのAPIを整備することも想定されています。
現状とは比較にならない多くのデータがやり取りされるようになるため、オーケストレーションやネットワークマネジメントが重要になります。またネットワークにアナリティクスを組み込んで、オーケストレーターにフィードバックすることによって効率的なトラフィック処理が実現できるようになります。
この新時代のネットワークでは、アクセスからデータセンターまで全体に仮想化技術を実装する必要があります。当社ではこれをオープンでグローバルなエコシステムによって実現したいと考え、NFV/SDNの標準化にも注力しています。特に「OPNFV(Open Platform for NFV)」の活動は重要になると見ています。
エコシステムの構築には相互接続性の確保も重要な役割を担います。当社では、米国にラボを立ち上げて通信事業者やベンダーが実際に当社の製品と接続可能かをテストできる環境を提供しています。この環境は日本では横浜のオフィスからご利用いただけます。人と人だけでなく、モノとモノ、業界と業界がつながることで社会は大きく変ります。エリクソンはこの変革を全力でサポートして参ります。
(文責・編集部)