第12回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
強力な通信網と顧客基盤の上で 新たなビジネス機会を生み出す
ソフトバンクモバイル 常務執行役員 喜多埜裕明氏

ソフトバンクの成長戦略の柱は、顧客基盤の拡大とネットワークの強化、コンテンツサービスの拡充の3つ。コンテンツ分野では、映像サービスの強化やYahoo!を通じたスマホ向けコンテンツの展開などに力を入れる。米PayPalと組んで、スマホ活用したクレジット決済サービスにも進出、O2Oなどの新分野のビジネス創出にも積極的に取り組んでいく。

 私は、ソフトバンクの子会社のYahoo! JAPANに97年に入社、途中からはCOOを務めておりました。12年3月にトップ3名が若手にバトンタッチし、現在私はソフトバンクモバイルでモバイルコンテンツを担当しています。今日は、ソフトバンクモバイルのサービスビジョンについて話をして参ります。

 弊社社長の孫は、ボーダフォンジャパンを買収した06年からずっと、モバイルインターネットで日本1になると言い続けてきましたが、最近これが「世界1」に変わりました。

 この日本1、世界1を実現するには、(1)顧客基盤の拡大、(2)ネットワークの整備、(3)コンテンツの強化という3つの要素が重要だと考えています。

 (1)については12年度上半期の純増数が151万と圧倒的な1位をとっています。営業利益も買収後V字回復し、上半期で2663億円に達しました。

 10月に買収を発表したスプリント・ネクステルとソフトバンクグループの携帯電話・PHS事業を合計すると、加入者数は9600万、売上は6兆3000億円で世界3位になります。この規模のメリットをインフラや端末の調達に活かしていきたいと考えています。

 (2)のネットワークでは、12年7月に提供を開始した900MHzの基地局整備の前倒し、今回傘下に入ったイー・アクセスの1.7GHz帯と弊社の2.1GHz帯のLTEネットワークの融合などで、お客様に快適なサービスを提供して参ります。

 さらにこの2つをベースに、(3)急速に普及が進むスマートフォン向けのコンテンツ事業にも力を入れていこうとしています。

 中でも期待できる分野の1つが動画で、現在175億円程の市場が2015年には約395億円に拡大すると見られています。

 当社でも、(1)エイベックスとジョイントベンチャーを組んで提供する月額490円で6万以上の映像コンテンツが見放題となるUULA(ウーラ)、(2)テレビのHDMI端子に小型のモジュールを挿入して、大画面で楽しめるSoftBank SmartTVなどのサービス展開を進めています。

 コンテンツ分野でもう1つ我々が注力しているのが、Yahoo!との連携です。すでにソフトバンクの携帯電話番号とYahoo!IDをひも付けてスマートフォンから簡単にログインできるサービスの提供を12年10月に開始しました。また、月額399円の有料メニューのYahoo!プレミアムでも1000種類以上のスマホ向けコンテンツの提供を開始し、好評を頂いています。

 もう1つ我々が力を入れているのがリアルビジネスとモバイルの融合です。

 昨年5月に弊社はイーコマース大手の米イー・ベイの子会社で決済サービスを手掛けているPayPalとの戦略提携を結び、合弁会社を通じてスマートフォンを決済端末の代わりに利用する新タイプのクレジット決済サービス「PayPal Here」を開始しています。

 クレジットカード決済は、導入時に10万円程度の決済端末が必要になることや、入金までのタイムラグが長いことなどから、使えないお店が意外に多くあります。

 PayPal Hereはスマートフォンに1400円程のカードリーダーを取り付けるだけでVISAやJCBなどのクレジットカード決済に対応でき、入金期間も短くできます。これによりクレジットカードが使える店舗を現在の100万程から大きく増やせると見ています。訪問販売などを含めれば500万程の新規需要があるのではないでしょうか。

 決済自体は、利幅の大きなビジネスではありませんが、お客様の行動履歴を活用して来店を促すO2O(オンライン・ツー・オフライン)などの取り組みにつなげることで非常に大きなビジネスが生まれるはずです。

 ソフトバンクは、今までなかった新たなサービスの提供を通じ、お客様のよりよい生活の実現に貢献して参ります。

(文責・編集部)

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