スマートフォンの普及によって、ユーザーの要求も、通信事業者やサービス事業者のビジネス環境も急激に変わっています。NECは、多様化するそれらの要求に対して、ユーザーも事業者も共にWin-Winとなれる新たなビジネスモデルを、SDN(Software Defined Networking)によって創出できると考えています。データトラフィックの急増など、ネットワークを取り巻く環境が変化する中で、通信事業者は大きく2つの課題に直面しています。1つは、CAPEXの効率化とOPEXの削減。そしてもう1つが、新たな収益を生み出すことです。収益拡大に向けてはサービス事業者対応戦略が鍵になります。ネットワークの安定運用を確保しつつ、これらを実現するソリューションを提供できることがSDNの価値なのです。
そのための第一歩としてNECが取り組んでいるのが、トラフィックマネジメントソリューション(TMS)です。トラフィックの(1)効率化によって設備投資を削減するとともに、トラフィックを(2)可視化し、何が流れているのかを分析します。この見える化が、(3)トラフィック制御(輻輳制御・QoS制御)によるネットワークの堅牢化、さらにビジネスモデルの変革による(4)マネタイズ、新たな利益創出への基盤となります。
マネタイズの例としては、特定のユーザーやアプリへの優先制御により段階課金を行ったり、サービス事業者に最適化された仮想ネットワークを提供、その利用料を受け取るといったモデルが可能になります。サービス事業者のサービスによって要求が異なるため、それぞれに応じたネットワークを柔軟かつ迅速に提供することが重要です。ユーザーやサービス事業者からの多様な要求に対して、ダイナミックにネットワークサービス及びネットワークの付加価値を提供し、新たなビジネスモデルで収益を拡大する。そこにSDNの価値があります。
これを実現するためのNECの取り組み「TMS & SDN」の足がかりになるのが、トラフィックの見える化です。
TMSで得られるトラフィック情報を活用して最適なフロー制御を行うことで、ネットワーク設備の利用効率は向上します。また、要求にあった優先度別のルーティングを行い、QoE(Quality of Experience:利用者の体感品質)を向上させることも可能です。NECのSDNソリューションは、一般的なSDN、データセンターを対象としたネットワーク仮想化だけでなく、TMSによるネットワークの見える化をベースに、サービス事業者、エンドユーザに最適なトラフィックのマネジメントやマネタイズ、コアネットワークの制御を可能にします。キャリアグレードの信頼性と柔軟性の高さを両立する次世代SDNコントロール基盤を提供し、さらにOSS/BSSによってキャリアネットワーク全体のオーケストレーションを展開していきます。
これにより、ネットワークにどのような付加価値が生まれるのか。前述のTMS & SDNによるネットワークの効率利用はその一例です。そのほか、サービス事業者に対してOSS経由でAPIを提供し、サービス事業者がそれを利用してユーザーのQoEを改善することも可能になります。BSSとの連携によって、オンデマンドな帯域変更など、柔軟かつリアルタイムな課金も実現できます。
サービス事業者が求める要件に最適なネットワークを提供することも容易になります。データ量は非常に少ないが信号量が大きなM2Mサービスと、データ量が大きく信号量は少ない動画ストリーミングでは、ネットワークへの要件はまったく異なります。SDNを適用すれば、こうした個々のサービスごとにリソースを最適化できます。また、QoEやSLAを見える化したり、ユーザーの契約情報に応じてネットワークを自律的に変更し、帯域を拡張するといったサービスも実現できるのです。
このような取り組みによってNECは通信事業者に対し、ネットワークの最適化と新たな付加価値を提供していきます。
(文責・編集部)