ここでは、通信キャリアが企業を対象にどのようにしてビジネスを創成し、収益を得ていくかについて話をして参りたいと思います。
これからの企業向けビジネスを考えていく上で、一番のキーとなるのが「ユーザー体験」です。
クラウドを例に見てみましょう。この分野では「プライベートクラウド」がHaaS(ハードウェア・アズ・ア・サービス)の形で展開され、イー・コマースを中心に一定の成功を収めました。ここでは、高価なITインフラをサービスに置き換えることで、システム構築の柔軟性を高め、コストを抑えられることが、企業にとっての利点となります。
しかし、これはクラウドビジネスの第1段階に過ぎません。今、大きく伸びているのが、クラウドを使って企業の顧客対応の向上や、生産性を高めるためのサービスを提供するものです。例えばWeb上で提供されているCRS(カスタマー・リレーションズ・サービス)は、大きな初期投資を行うことなしに、高品質な顧客対応を実現できるもので、中小規模の企業にも広く導入されています。
この種のサービスは、技術そのものよりも「ユーザー体験」の側に焦点を合わせることが重要です。その企業にとって導入メリットがどこにあるのかを明確にすることが求められるのです。
通信キャリアがこの分野で収益を得る手法には2つの形態が考えられます。1つはサービスを自らの顧客に提供する形です。この分野にはすでに多くのプレイヤーが存在しますが、通信キャリアにはネットワークとクラウド機能を組み合わせた魅力あるサービスを実現できる可能性があります。
もう1つがホールセール型です。ここでの通信キャリアの役割は、コンテンツやアプリケーションのサービスを行う企業に、ネットワークやサービスプラットフォーム機能を提供することです。
例えばKindleは携帯電話回線を使った電子書籍サービスですが、ユーザーが契約しているのはあくまでアマゾンで、通信キャリアは表に出ません。同様のモデルは電気自動車のメンテナンスなど、さまざまな分野に広がりつつあります。
新しい時代のクラウドサービスは、企業のビジネスの実状を把握して、その課題の解決策を提供していくことが求められます。
通信キャリアにとっては、自らサービスを開発するだけでなく、サードパーティの多様なサービスをパッケージ化し、企業・業界に向けに提供していくことが、大きなビジネスになる可能性があります。ここでは通信キャリアが、クラウドサービスの「ブローカ」の役割を担うことになるのです。
HPでは、(1)ハードウェア/インフラ、(2)ミドルウェアを統合したHP Cloud Service Automation、(3)さまざまなサービスをパッケージ化して企業に提供するHP Aggregation Platform for SaaSなどのソリューションを通じて、こうした新たな通信キャリアの企業向けビジネスをサポートしていきます。
今ひとつ、ビッグデータも通信キャリアが企業向けビジネスで収益を上げていく上で重要なビジネスになりつつあります。
通信キャリアの手元には加入者やネットワークに関連する膨大な情報が集まってきます。これらを活用することで、a)通信キャリアのサービスの売上増大、b)ネットワークリソースの最適化、さらには、c)得られたデータを加工して、企業に販売することなどが、可能になります。特にc)はマーケティングなどの分野で活用でき、企業にも非常に強いニーズがあります。
ビッグデータ関連のビジネスでは、グローバルにビジネスを展開するプレイヤーではなく、ローカルな企業のニーズを把握している通信キャリアにこそ、大きなチャンスがあるものと思います。HPは、ここにトータルなソリューションを提供することで、通信キャリアのビッグデータビジネスのお手伝いをしていきたいと考えています。
(文責・編集部)