第12回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
スマホ/LTEを基盤に新領域事業 コンテンツビジネスの世界展開も
NTTドコモ 代表取締役副社長 岩崎文夫氏

NTTドコモの成長戦略は、ネットワークと端末、クラウドを中心とするサービスを基盤に、同社が新領域分野と呼ぶ新サービス/ビジネスの伸長を図ろうとするものだ。中でも12年12月にスタートした「dショッピング」は、物品販売への進出と同時に、ドコモが関連会社を通じて展開するリアルビジネスとの相乗効果を狙う新たな試みとなる。

 ドコモはデータ通信や新領域事業の拡大により、今後も成長を可能にしていきたいと考えており、そのために端末、ネットワーク、クラウドを中心としたサービスの三位一体の取り組みを進めています。

 まず端末では、データ通信収入の増大を牽引しているスマホ/タブレットを中心に多彩なラインナップを展開しています。2012年の秋モデルで5機種、冬モデルでは10機種のAndroid端末を投入しました。(1)グローバル機を含む全機種が、おサイフケータイやワンセグ、エリアメールなど日本独自の機能に対応していること、(2)高齢者の利用を考慮した「らくらくスマートフォン」など、ユーザーの多様なニーズに対応できる多彩な端末を展開していることがドコモのスマホ/タブレットの大きな特徴です。12年度は1400万台を販売したいと考えています。

 ネットワークについては、スマートフォンの普及に伴うトラフィックの急激な伸びへの対応が重要な課題です。いかにしてスループットを落とさずに、快適な環境を維持できるかは、キャリアにとっての生命線といえます。

 ドコモでは対策を3つの柱で考えています。

 1つが3Gの3倍の周波数利用効率を持つLTE(Xi)の推進。2つ目がヘビーユーザーに対する速度制限の導入。3つ目が、Wi-Fiオフロードなどによるネットワーク負荷の軽減です。

 基本となるLTEの整備では、今年度末までに基地局を前年度末の2倍強、2万3000局に増やし、サービスエリアを人口カバー率75%にまで広げる計画です。通信速度もすでに受信時最大100Mbpsに対応していますし、2013年春に投入するカテゴリ4対応端末では112.5Mbpsでの通信が可能になります。

 ドコモでは、多彩な端末と高品質なネットワークという基盤の上で、さまざまなクラウドサービスを展開していこうとしています。そのベースとなるのがドコモのIDの認証基盤とパーソナライズ基盤の2つで、これにより端末を問わずに決済ができるなど、お客さまの好みに応じたサービスを提供することが可能になります。

 弊社ではクラウドサービス「ドコモクラウド」を、(1)dマーケット、(2)インテリジェントサービス、(3)ストレージの3つの方向性で展開しています。

 dマーケットはドコモ直営のコンテンツマーケットで、ビデオや電子書籍、音楽、ゲームなどを扱っています。12年12月からは、日用品などの物品販売を手掛ける「dショッピング」もスタートしました。

 dショッピングでは、有機野菜宅配の「らでぃっしゅぼーや」や、CD販売のタワーレコードなど、リアルビジネスを手掛けるドコモのグループ会社の商品も扱い、モバイルとリアルビジネスの相互送客、O2O(オンライン・ツー・オフライン)を実現していこうとしています。

 2番目のインテリジェントサービスでは、「しゃべってコンシェル」や12年11月にスタートした「はなして翻訳」、10月開始の「うつして翻訳」などの翻訳系サービスが好評です。

 最後のストレージ系では、13年1月から電話帳やメールのクラウド化を実施します。これにより複数の端末デバイスでデータ共有できるなど、ユーザーの利便性が大きく向上します。

 海外事業では、通信キャリアだけでなく、レイヤーの高いプラットフォーム、サービス関連企業への投資にも注力しています。12年には欧州最大のモバイルコンテンツサービス事業者ボンジョルノを買収、中国の検索事業者の百度とも合弁企業を立ち上げました。

 ドコモはこれらのプラットフォームを通じて、アニメやマンガなど日本のコンテンツ産業が世界で成功できるビジネスモデルを作り上げたいと考えています。これらの取り組みを有機的に結合することで、ドコモは持続的な成長を可能にしていこうと考えています。

(文責・編集部)

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