ここでは、当社のNFVへの取り組みを、事例を交えて紹介させていただきます。私どもウインドリバーは組み込みシステム向けのリアルタイムOSに強みを持つ企業で、現在は2009年に買収されたインテルの子会社としてソフトウェア・ソリューションを展開しています。当社の製品は、航空・宇宙・防衛、医療、自動車など高い信頼性が求められるシステム・インフラを中心に広く採用されており、20億のデバイスの上で稼働しています。これが当社の事業の強み、DNAなのです。通信業界でも20年以上にわたって事業を展開し、大手の通信機器ベンダー、通信事業者のビジネスを支援させていただいています。
(1)既存顧客の維持、(2)新規顧客の獲得、(3)新サービスによるARPUの拡大の3つは、世界の通信事業者に共通する重要課題といえるでしょう。これらの実現には、ネットワークの品質を向上させ、サービスを迅速にしかもローコストで提供できる仕組みが必要です。NFVはその有力な手立てと成り得るものですが、ここで問題になるのが信頼性です。IT業界では仮想化はすでに広く用いられ、99.95%の可用性、つまり1年間のダウンタイムが4時間程度という信頼性が実現されています。ところが、通信事業者のネットワークではこれより遥かに高い99.999%の可用性が求められます。年5分のダウンタイムしか許されないのです。サービス基盤では99.9999%の可用性、ダウンタイム年30秒以下というSLAを実現しなければなりません。
ウインドリバーの「Titanium Server(タイタニアム サーバー)」は、通信業界におけるこうした厳しい要件を満たすためのソフトウエアプラットフォームで、NFVの仮想化基盤(NFVI)を提供します。
制御部を含むコンピュートノードの障害を非常に短時間で検知し仮想マシンを他のリソースに移し替える高速フェイルオーバーや、動作を停止することなく仮想マシンをアプリケーションごと移行するライブマイグレーションをはじめ、さまざまなアプローチで99.9999%の可用性を実現します。さらに、高い仮想スイッチ能力により優れたハイパフォーマンスを得ることができます。
幾つかの通信事業者では、すでにTitanium Serverを用いてNFVの導入に向けた取り組みが進められています。チャイナテレコムではLTEのコアネットワーク(vEPC)を構築し、VoLTEを実現しようとしています。同じく中国のチャイナ・ユニコムでは、仮想化技術により宅内設備の機能をネットワーク側で提供するvCPEの導入に向け評価が進められています。韓国のLG U+は仮想化ルーターを導入しようとしています。
信頼性や処理能力に加えTitanium Serverで高い評価をいただいているのが、そのオープン性です。ウインドリバーは、ETSI(欧州電気通信標準化機構)での標準化やOPNFVをはじめとするオープンソースコミュニティへの参画や投資を通じ、オープンスタンダードへの取組みを強化してきました。これにより、共通のAPIを利用した多様なベンダーとの連携が可能になります。また、Titanium Serverを核とするパートナーエコシステムであるTitanium Cloud(タイタニアム クラウド)を立ち上げました。Titanium Cloudには今日まで継続的に新たなパートナー企業が参加しており、そこには、VNF(アプリケーション)、オーケストレーター(統合管理)、OSS/BSSを提供するソフトウェアサプライヤーや、さらにハードウェアの主要メーカーが含まれ、NFV構築に必要なあらゆるソリューションをカバーしています。
通信の世界で仮想化が本格化し、新たなテクノロジーやサービスへの対応が喫緊の課題となる中で、ウインドリバーはお客様の柔軟かつ信頼性に優れた新たなサービス基盤構築を支援します。
(文責・編集部)