第16回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
B2B2Xで企業のデジタル変革を支援 NTTは“ムーンショット”に挑む
NTT 常務取締役 技術企画部門長 小林 充佳氏

デジタル変革の波に対応すべくNTTグループではB2B2Xモデルへの転換に取り組んでいる。2020年に向け構築される新ネットワークでは、APIを用いて他の企業がNTTの網機能を活用できるようになるという。NTTは5G、共通AI基盤の「corevo」、さらには秘密分散・秘密計算技術などR&Dの成果を活かし、企業の新たなビジネス創出に貢献していく。

 多くの企業にとってデジタル・トランスフォーメーション(ICTを活用した事業構造・業務プロセスの変革)への対応が大きな課題になっています。すでに米国ではネット上でタクシーの配車サービス、一般人が自家用車を使って他人を運べる仕組みを提供している「Uber(ウーバー)」や、宿泊施設・民泊の仲介を行う「Airbnb(エアビーアンドビー)」などのデジタル・エコノミーが爆発的な広がりを見せ、既存のビジネスに大きな影響を及ぼしはじめました。AIを活用した新たなビジネスも続々と生まれてきています。この変化の中で、日本の企業も従来の守りのIT投資から、積極的にビジネス・顧客の拡大を目指す「攻めのIT投資」への転換を迫られているといえるでしょう。

 NTTグループは自らもこの変革に取り組むと同時に、世の中全体のデジタル・トランスフォーメーションを後押ししたいと考え、NTTグループの資産・能力を活用して企業の皆様にビジネスを展開していだだく「B2B2X」モデルへの転換を進めています。主体はあくまで企業の皆様で、NTTは黒子としてビジネス支えていこうというわけです。

 NTT東西が昨年2月にスタートさせた光コラボレーションモデルでは、9月時点で427社がNTTの光回線を使ってエンドユーザーにサービスを提供されています。

 注目されるのが、この内、住宅メーカーや警備会社など、光回線と自社のサービスを組み合わせて付加価値を高めようとされている企業が23%を占めていることです。まさにここが我々の狙いとしていたところで、こうした取り組みをされる企業は今後さらに増えていくと期待しています。

 NTTドコモが進めているコラボレーションモデル「+d(プラスディー)」も言葉を変えたB2B2Xといえるもので、パートナー数は、当初の33から1年で164に増えています。

 現状ではこれらは光回線の卸といったプリミティブな提供形態にとどまっていますが、今後、IoT分野をはじめとするサービスプラットフォームの提供などを通じ、企業の付加価値の高いサービス展開のお手伝いをしていきたいと考えています。

 NTTグループでは、数10Gbpsの超高速通信や1m秒以下の超低遅延の通信が可能にする5Gの実用化を2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて進めています。並行して有線ネットワークも光通信を基本としたシンプル・大容量・柔軟なものに変えていこうとしています。新たなネットワークでは、APIを活用してパートナー企業がサービスに必要な機能をチョイスし、瞬時にエンドユーザーに提供できる「コラボレーションプラットフォーム」を構築することを計画しています。

 ネットワーク以外にもNTTではさまざまな分野の技術開発に取り組んでいます。例えば東レと共同開発した生体情報を計測できる「ウエアラブル下着」は、交通機関の事故防止に広く使われることが期待されています。

 NTTグループの共通AI基盤「corevo」を用いて、クラウドとロボットを連携させた新しいサービスなどが実現できないかといった検討も行っています。NTTの研究所が取り組んでいる秘密分散・秘密計算技術を活用することで重要なデータのセキュリティ対策が簡便に行えるようになることも期待されています。

 我々は、ネットワーク、デバイス、サービスプラットフォーム、そしてこうした新たな技術開発の成果を活かし、お客様である企業の新たなビジネスの創出に貢献して参ります。

 シリコンバレーの会社などでは最近よく「ムーンショット」という言葉が使われています。アメリカのアポロ(有人月着陸計画)のように思考回路を変えなければ実現できない、共感・感動を呼び起こせる取り組みという意味です。

 NTTグループは、2020年に向け“ムーンショット”に挑戦して参ります。

(文責・編集部)

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