今日は「IoT/5G」と、そのセキュリティ面での課題について話をして参ります。「IoT/5G」と表現したのは、すべてのモノがつながるIoTが、5Gの基本的なユースケースになると考えているからです。
まず、3GPPにおける標準化の動きを見ていきましょう。3GPPでは、1990年代の終わりに3Gの規格が策定され、2009年のLTEの標準化により4Gの時代に入りました。4Gでは当初、高速化、大容量化が追求されましたが、近年では機能拡張により全く新しいソリューションに進化してきています。今年、固まった最新仕様の「リリース13」では、異なる2つの基地局と接続して安定した高速通信を可能にするデュアルコネクティビティが上り側を含めて実現されました。またWi-FiとLTEを組み合わせてサービスを行うことも可能になっています。省電力性やカバレッジの拡大を実現し、大量のデバイスの接続に対応できるIoT向けの新しい通信技術「NB-IoT」なども標準化されました。これらが、まさに5Gの出発点になるのです。
5Gでは20Gbpsという非常に高い最大通信速度、4Gの100倍のネットワーク容量、4Gの10分の1(1ミリ秒)の低遅延化などが実現され、移動通信のユースケースを大きく広げることが期待されています。同時にネットワーク、その利用形態にも多くの変化が生じます。
例えば適用領域の拡大に伴い、膨大な数多様なデバイスがネットワークに接続されるようになります。
5Gでは30GHzを超える高い周波数が使われ、セル半径が非常に小さくなるため、これを補完するためにビームフォーミングなどの新たな技術が導入されます。
ネットワークでも、仮想化、オープンソースの活用、クラウド化などが進められ、リソースをユーザーや用途毎に切り出して提供するスライシングが広く行われるようになります。
そしてビジネス面では、オープンAPIを活用してパートナーや一般のユーザー企業が、通信事業者のネットワークをあたかも自社のネットワークのように使って事業を行えるようになると見られています。こうした大きな変化にセキュリティも対応しなければなりません。
例えば、新たにネットワークに接続される多様なデバイスの中には小型のセンサーなど、処理能力が低く、既存セキュリティ機能に対応できないものが入ってくる可能性があります。これにどう対処するかは、大きな課題になります。
IoT機器の認証にeSIMが使われるようになってきていますが、専用のハードウェアを使う現在のeSIMではこうした小型のデバイスには対応できないかもしれません。
オープンAPIの活用でさまざまなビジネスが登場してくることが期待されていますが、このAPIがセキュリティホールになる可能性も指摘されています。認証をどう行うのか、暗号化キーをどうやって安全にやり取りするのかなど、検討しなければいけない課題が多く残っているのです。
スライシングやビームフォーミングなどの技術の導入においてもセキュリティの確保が大きな問題になります。
こうした様々なセキュリティ上の課題に対応する上で、我々はネットワークをモニタリングして、問題を見つけ自動的に対応する「クローズド・ループ・セキュリティ」が重要になると考え、開発に力を注いでいます。
5G/IoTの時代においても、パスワードの管理や、OSやプロトコルの脆弱性対策などのベースバンドセキュリティは非常に重要です。その上で5Gの特性を踏まえた新しいセキュリティ対策を講じなければなりません。
セキュリティは通信事業の基本です。これを確保することで5G/IoTによる新たなビジネスチャンスをつかみ取ることができるのです。
(文責・編集部)