第15回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
SDN/NFVは商用化フェーズに 運用観点で見えてきた課題と対策
NEC TOMS事業推進統括部 NetCracker Japan 部長 木賀勇介氏

SDN/NFVがいよいよ商用化段階に入ってきた。通信事業者の検討内容も機能検証の段階を終え、商用化に向けた運用面での課題克服に移っている。NECでは、運用面を含むトータルソリューションの提供を通じて、オペレーションの変革や既存・仮想のハイブリッド環境への対応など、SDN/NFVの商用化に向けた通信事業者の課題解決を支援していきたいと考えている。

 NECは、ネットワーク/ITベンダーとしてSDN/NFVのソリューションをグローバルで展開しています。今年2月には当社のネットワークの強みと、7年前に買収した世界トップクラスのOSS/BSSベンダー、NetCrackerの持つオペレーションの強みを合わせて、運用・保全を含む1つのソリューションセットを立ち上げました。本日は、SDN/NFVをどのように運用し商用化していくかを中心に話をして参ります。

 世界の通信事業者が直面している大きな課題に、収益が増加しない中で急増するトラフィックをさばくためのインフラ投資だけが増大していることが挙げられます。いかにして設備投資を削減して収益を増大させるかが通信事業者の関心事となっているのです。SDN/NFVの議論もこうした中から出てきてきたものだと思います。

 当社が国内外の多くの通信事業者様とSDN/NFVに関してのPoCや商用化に向けたプロジェクトに取り組ませていただいている中で見えてきた最近の大きな変化として、3年程前はコスト削減が導入の主要な動機だったのが、ここ1年ぐらいはSDN/NFVを活用して新たなサービスを迅速に提供し収益につなげていくかが大きな関心事項となっている事があげられます。

 検討テーマも、運用上の問題点や収益化の方策など、商用化に向けた具体的な課題の解決に移っています。

 こうした検討の中から商用化に向けた大きく3つの課題が見えてきました。

 1番目の課題がSDN/NFVの導入後の運用をどのようにしていくかです。

 従来の物理ネットワークでは、例えば新サービスを展開するにはこうした設備が必要で調達には何カ月かかるなど、サービスとインフラの管理には密な関係がありました。これに対してSDN/NFVの世界では、インフラ部門は予測に基づいて余裕を持ったリソースを提供し、サービス部門はこれを前提に独自にサービスを展開する形となり、両者の関係は疎なものになります。障害対応も自動化され、故障したサーバーを定期点検時にまとめて交換するような形に変わります。こうした新しいやり方にどう対応するか、こうした環境でトラブルが生じた際にどうすれば通信事業者として責任を持った対応ができるかが大きな課題になります。

 NECでは、この課題の解決策の1つとして「見えるけど見せない運用」を提案しています。通常は各部門がネットワークから必要な情報だけを取得し効率的に業務を行い、必要のない部分は「見せない運用」を行いますが、障害が起きた時には論理、仮想、物理の各層を紐付け、原因を特定するなどの「見える運用」ができるようにしようというものです。

 2番目が既存NWからSDN/NFVの環境への移行に際し、通信事業者の実サービス、実NWを考えると物理/仮想が混在するハイブリッドNWを相当期間運用することになることです。これに対処するには仮想・物理NWを一元管理できる仕組みが必要です。私どもはその手段としてNetCrackerから「E2E Service Orchestrator」というソリューションを提供しています。これは、通信事業者がエンドユーザにサービスを提供する際に、既存NWを管理するOSS/BSSやNFVの管理を行うMANOを一元的に管理するものです。NetCrackerのOSS/BSS事業での豊富な経験を活かしマルチベンダー、マルチテクノロジー環境に対応できる点がご評価いただいています。

 3番目の課題が、SDN/NFVの機能を活用して回線サービスとNWサービス、外部のWebサービスなどを一元的に1つのクラウドサービスとして提供できるようにして、新たな収益源を生み出すことです。 E2E Service Orchestratorは、こうしたサービスに必要となる多様な機能を提供できます。NECはSDN/NFVのトータルソリューションの提供を通じ、通信事業者の業務変革を支援して参ります。

(文責・編集部)

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