企業WANのコスト効率や俊敏性を大きく向上させる新タイプのソリューション、SD-WANの導入が米国で大きなトレンドになってきています。
SD-WANは、SDN技術を活用してMPLSサービスやインターネットなどのIP網にオーバレイする形で企業WANを構築するものです。その最大の魅力はWANコストの削減効果で、既存ネットワークに比べて40%以上のコストダウンが可能だとされています。
ここではマクニカネットワークスが扱っている米Viptela社のSD-WANソリューションの機能とユーザーメリットを見ていきたいと思います。
Viptelaは、2012年に設立されたSD-WAN専業の会社で、当社は2015年6月に代理店契約締結で合意し販売活動を行っています。日本での導入はこれからですが、米国では相当実績が出てきていて、大手企業上位500社のうち15社に採用されています。
ViptelaのSD-WANソリューションは専用エッジルーターの「vEdge」と、クラウドサービスとして提供されるSDNコントローラーの「vSmart」などのコンポーネントによって構成されています。
vEdgeは企業WANに収容される拠点やデータセンターなどに配置される装置で、MPLSやインターネット、LTEなどの回線を接続することでvEdge間をIPsecで結ぶ広域ネットワークを容易に構築できます。vEdgeはクラウド上のSDNコントローラー(vSmart)で集中制御されており、多様なトポロジーを組むことができます。例えば電話用にフルメッシュ型、業務システム用にはデータセンターを中心としたハブ&スポーク型と、アプリケーションによってトポロジーを変えることも可能です。
また、メイン回線にMPLS、サブ回線としてインターネットを用いて、MPLS側が混雑して遅延が一定の数値を超えた場合にサブ回線へオフロードさせたり、DPIでアプリを識別してYouTubeなどをサブ側でやりとりするといった運用を行うこともできます。
これにより回線コストを抑えつつ、より安定した通信が実現できます。こうしたネットワークの構成変更や設定は、クラウド上の管理サーバー(vManage)を介してユーザー自身で手軽に行えます。この柔軟性と俊敏性の高さがViptelaの大きな特徴なのです。
もう1つの大きな特徴に、既存WANのルーターをvEdgeに交換する形で拠点の既存ネットワークを変更せずに容易に導入できることが挙げられます。導入作業もvEdgeにインターネットなどの回線を接続して、認証を行えば自動的に設定が完了するゼロタッチプロビジョニングが実現されており、ネットワーク技術者を派遣する必要がありません。これにより導入コストを大幅に抑えられ、大規模なネットワークも短期間で整備できます。
アパレル大手のGAPはViptelaのSD-WANを用いて世界3500の店舗をMPLSで結んでいる社内WANの再構築を行っていますが、1日25店舗のペースで導入が進められています。
ViptelaのSD-WANの導入には、vEdgeの購入費用とvSmartのライセンス費用(年間更新、サポートを含む)が必要です。他方、インターネットなどの活用により回線コストを抑えることができ、導入・運用コストも大きく下がるためトータルのWANコストは大きく低減されます。GAPのケースではMPLSを廃止し50%のコスト削減を実現しようとしています。
注目されるのが、このソリューションを活用して通信事業者が企業向けのサービスを提供する動きが出てきていることです。世界のキャリア上位10社では米ベライゾンとシンガポールテレコムがViptelaのSD-WANによるサービスを行っています。
マクニカネットワークスではコストを下げて、より付加価値の高いネットワーク環境を実現できるこのソリューションを、パートナーや通信事業者の皆様とともに、多くの企業に提案していきたいと考えています。
(文責・編集部)