今日はNFV/SDNを中心にKDDIがネットワークやサービスをどう進化させていこうとしているかについて話して参ります。東京オリンピックが開催される2020年に向けて通信事業者のネットワークが大きな進化を遂げようとしています。NFV/SDNや5Gなど新たな技術を用いたネットワーク上で4K/8Kの映像サービスや様々なIoTのアプリケーションが花開くことになるでしょう。
ここで、1つ注意しなければいけないと思っているのが、こうした新時代のネットワーク・サービスは、ユーザーセントリック──お客様が何も意識しなくても使えるようなものでなければいけないということです。NFV/SDNはこれを実現する手段なのです。
こうした視点から、まずKDDIが2014年8月に提供を開始した広域ネットワークサービス「WVS2(Wide Area Virtual Switch 2)」を紹介させていただきます。WVS2には、SDNライクなアーキテクチャ・機能が搭載されていまして、我々はこれを用いて、かなりユーザーセントリックなセキュリティアプライアンスサービスを提供できているのではないかと思っています。
具体的にはネットワーク側にウィルス対策やIDS/IPS、ファイアウォールなどの機能を用意しておき、お客様が手元のPCで選択することでこれらの機能がお客様のネットワークで使えるようにしています。回線の帯域幅もPCから設定することが可能です。将来的には、これを、お客様が操作を意識することなく自動的に必要な処理が行えるようなサービスに進化させることも検討しています。
次にNFVです。NFVは、これまでハードと一体だったネットワーク設備からソフトを分離し、汎用サーバー上で実行できるようにしようとするもので、ネットワークの可用性や迅速性を大幅に向上させることが期待されています。
シーズオリエンテッドな考え方に立てば、サーバーの仮想化がこれだけ進んでいるのですから、ネットワーク機器が仮想化されるのは当然の流れでもあるわけですが、実際にはなかなか実用化が進まないところがあります。
私は、これを大きく前進させるにはニーズオリエンテッドな部分が必要だと考えていて、おそらくIoT/M2Mビジネスの立ち上がりが、そのトリガーになると見ています。
IoT/M2Mでは、用途毎にさまざまな要件が求められるため、1つのネットワークでニーズに応えていくことが難しいのですが、NFVでは用途やユーザーごとに設備を切り分けるネットワークスライシングという考え方がとられていて、多様なニーズに効率良く対処できる可能性があります。今、こうしたことも想定しつつNFVの導入の準備を進めているところです。
もう1つNFVで実現したいと考えているものに、バーチャル・ホームゲートウェイ(vHGW)があります。家庭やオフィスにボックスだけを配置し、ネットワーク側で用意されている様々な機能をお客様が自由に選べるようにするというもので、かなりユーザーセントリックなサービスにできるのではないかと期待しています。
加えてNFVに我々が強く求めているものに運用の自動化があります。障害が発生した際にネットワークが自動的に措置を講じてサービスが継続できるようにすることなどが想定されていて、当社では2015年にKDDI研究所がベンダー7社と共同でNFVの自動運用のデモを行いました。次のステップではこれを実ネットワークでやりたいと思っています。
こうした取り組みを通じて、NFVでは故障の切り分けが難しいなどの課題が見えてきています。同時に、これからのネットワークでは運用の自動化は避けて通れないこともはっきりしてきました。
KDDIは、パートナーの皆様と手を取り合ってユーザーセントリックなネットワークを実現していきたいと考えています。
(文責・編集部)