クラウドの利用領域の拡大やIoTの進展といったIT環境の変化が、通信事業者のネットワークに大きな変革を迫っています。世界の多くの通信事業者が、新たな時代のニーズに対応できるネットワークの構築に取り組んでいますが、これには課題も少なくないようです。
例えば、通信事業者の現在の事業モデルではビジネス上のメリットが明確なものにしか投資ができず、小さなアイディアがなかなか実現できないことが課題となっています。
通信業界の外で登場してきている破壊的な技術・ビジネスを自らの事業に取り込めるようにすることも課題です。
現行の標準化の手法では、必要な技術が使えるようになるのに時間がかかってしまうことも問題です。
こうした様々な課題に対処できる明確な技術アーキテクチャの青写真が必要とされているのです。
では、これは具体的にはどのようなものになるのでしょう。ジュニパーは次の4つの要件を満たすことが必要だと考えています。
1番目が、ネットワークの簡素化、構築のスピードアップ、信頼性の向上、そして標準化、これらを推し進めることです。これによって設備投資を削減できるようになります。
2番目が、自動化できることはすべて自動化することです。これによりOPEXを削減できます。
3番目がクラウドコンピューティングを中心にサービスモデルを考えることです。端末がどこからでも快適にアクセスできる環境を整備する必要がありますし、トラフィックの急速な拡大にも対処しなければなりません。
4番目が、膨大な数の多様なデバイスの接続に対処するためにセキュリティを強化することです。
これらの中で2番目の自動化はOPEX削減の切り札となるだけでなく、(1)正確でより早いサービスの提供(俊敏性)、(2)インフラの効率的な利用(効率性)、(3)高度な攻撃に対する保護(セキュリティ)、(4)インフラが意図通りに使われているかを検証できる(コンプライアンス)などのメリットももたらします。
自動化を実現するには、1番目のネットワーク構築の簡素化と標準化が前提となります。今後はネットワーク仮想化技術(NFV/SDN)が、自動化に対応できる簡素なネットワークを構築する有力な手だてとなっていくでしょう。
よくネットワークを仮想化することで設備コストが抑えられるといわれますが、これは必ずしも正しくありません。必要なキャパシティに大きな変化がなく、設備の稼働率がある程度高ければ従来の物理インフラの方がコストは安価に済むことが多く、逆にトラフィックが変動するケースでは仮想化が有利になります。規模の面でもスイッチ・ルーターの処理能力が100〜250Gbpsを超える場合は、物理インフラの方が有利です。そこで当社はx86ベースの仮想化装置のターゲットを百数十Gbps以下の領域に置いています。
設備コストを大きく左右するファクターとなるのが、ライフサイクルコストの相当部分を占める物理・仮想インフラの統合費用です。そこで当社は仮想化ルータ製品のvMXプラットフォームに、既存のネットワーク機器のMXプラットフォームと共通のコードを用い、同じプロセス・ワークフローを利用できるようにしました。これにより統合費用を大幅に抑えることができます。
ジュニパーネットワークスは、この4つの要件を実現できる幅広い製品群をラインナップしており、これが我々のコアコンピテンスとなっています。
当社はAT&Tの「Domain2.0」など多く通信事業者の次世代ネットワークプロジェクトに協力し、ネットワークの複雑化の排除、自動化、コストの削減に貢献しています。
当社は、ネットワークの変革を既存のインフラ投資を無駄にすることなく実現できるようにしていきたいと考えているのです。
(文責・編集部)