私はファーウェイのコンサルティング部門に所属し、NFV/SDNを含む仮想化ソリューションを担当しております。本日は、この1年の日本国内および海外のお客様やパートナー様とのお話を踏まえた、私どものマーケットに関する知見を共有させて頂きたいと思います。
ある調査会社のレポートでは、NFV/SDN市場は2018年には2014年の10倍以上に成長し大規模な市場を形成、その半分がNFVのソフトウェアになると予測されています。ネットワークに携わる人間にとって、仮想化への取り組みは避けて通れなくなっているのです。
では、具体的にはNFV/SDNはどのような形で導入されていくのでしょうか。まず通信事業者では大きく3つの流れがあると我々は考えています。
1つがモバイルコア、EPCやIMSなどを仮想化する動きです。すでに欧州の主要移動体通信においてLTEやVoLTE導入のタイミングで商用化が始まっています。
2つ目がホームゲートウェイやSTBなどの宅内機器の機能を仮想化しユーザーに提供するvCPEで、多くの事業者ですでに商用化されています。
注目されるのが3つ目、本日はクラウドインテグレーションと呼称しますが、将来のネットワーク仮想化に向け、まずベースとなるクラウド基盤の整備を行おうとするアプローチです。すでにテレフォニカが「UNICAインフラストラクチャ・プロジェクト」、AT&Tも「Domain 1.0/2.0」の名称でこの種の取り組みを進めています。これらは中長期計画として立案され、社外にもそのプロセスが公表されています。
他方、通信事業者以外でも、データセンターやクラウド事業者などでSDNの導入が進んでいます。最近ではアクセスルーターやファイヤーウォールなどを仮想化する製品(VNF)の登場が呼び水となり、NFVとSDNを組み合わせて導入する動きが本格化してきています。
こうした中、今後、通信事業者とクラウド事業者間の設備やサービスの相互利用がより透過的に拡大利用されると考えられます。例えば、NFV/SDNプラットフォームを持つ事業者は、パブリッククラウドで提供されるサービスを自身の顧客により簡単に提供することが可能になります。まさにハイブリッド・クラウドです。先ほどのテレフォニカやAT&Tのケースはこうした展開を視野に入れたものとも考えることができます。
こうしたトレンドを踏まえて、我々は仮想化を進めていく上で3つの点が重要になると考えています。
1点目は周到な事業計画を策定することです。仮想化は社内外にまたがる注目度の高いプロジェクトになるので、技術部門中心の現状の体制では対応が難しく、例えば、継続的な投資効果を検証するための財務分析や広報の専門家の参加や、プロジェクトマネージャーにも広い担当範囲が求められます。
2点目がインテグレーション力です。基本的にNFVはマルチベンダーで実現されます。また大手IT、通信ベンダーが役割を分担して取り組む可能性が大きいので責任範囲の明確化が重要になります。既存システムとの統合やKPIやSLAに基づいてシステムを継続的に改善していくことも重要です。
最後が、データセンターやクラウド事業者、一般企業にもNFV/SDNの導入が広がることで生じる様々なオプションを活用していくことです。
ファーウェイでは、NFVとSDN、さらにクラウドを統合的に扱える「ICT オーケストレータ」という新たな管理層を設けるなど、新時代の仮想化環境に向けた製品ラインナップの強化を図っています。また、今年1月には東京にジャパン&コリア・コンピテンスセンターを設け、仮想化だけでなくIoT、ビッグデータなど様々な分野にわたるコンサルティング、営業支援活動を行える体制を整備、これらを通じて新時代の通信事業者のビジネスに貢献していきたいと考えています。
(文責・編集部)