このセッションでは、私どもデルがNFVをどう捉えていて、その実現に向けてどのような取り組みを行っているかについて話していきたいと思います。
デルはPCからスタートした企業で、ITの複雑な技術をオープンな標準技術を用いてできるだけシンプルにして普及させることに注力してきました。NFVでもこの新しい技術をできるだけ使いやすい環境で提供していきたいと考えています。
コンピュータの世界では70〜80年代に主流だったメインフレームがx86コンピューティングに移行し、OS、アプリケーション、ハードウェアの選択肢が大きく広がりました。これにより技術革新のスピードが加速し、大きな経済効果が生まれました。
同様の変化が今ネットワークの世界にも起きつつあります。その1つであるNFVでは、独自の通信機器で実現されてきた通信事業者や企業の通信ネットワークの機能が仮想化技術によってx86サーバー上に実装されることになります。これによりCAPEX/OPEXの削減、開発の効率化による多様なサービスの登場、通信事業者の収益拡大などの効果が期待されています。通信がアナログからデジタルに転換した時と同じようなパラダイムシフトが市場で起きつつあると我々は見ているのです。
NFVでは、ネットワークの様々な機能はアプリケーションやMANOと呼ばれる管理ツール等としてコンポーネント化され、ブロックで提供されるようになります。デルではエコシステムを活用して、これらを組み合わせて1つのソリューションとして提供するビルディングブロック型のビジネスモデルを想定しています。
デルのNFVの実用化に向けた取り組みの柱の1つが研究開発です。その中核を担っているのがデルのR&D部門、デルリサーチであり、2013年に新時代の通信事業者のニーズに応えるための技術開発プロジェクト「High Velocity Cloud」をスタートさせました。これは、(1)膨大なトラフィックへの対応、(2)サービス展開速度の向上、運用の効率化、新ビジネスの創出、(3)リアルタイムデータ分析の3分野にフォーカスしたもので、他のベンダーとも協力してPoC(実地検証)などの取り組みを進めています。
NFVへの取り組みのもう1つの柱が標準化です。ETSI NFVには当初から参加しており、標準化のペースを加速させるべくオープンソースコミュニティでの活動にも注力しています。
キャリアグレードのNFVのリファレンスプラットフォーム策定を目指しているOPNFVの活動には特に力を入れており、2014年9月の創設時から幹事メンバーとして活動しています。幹事会の事務局長やコンプライアンスと認証を担当する委員会のチェアマンも当社から出ています。
OPNFVでは最初のリリースArnoの策定を終えており、現在は16年2月に向けて次のリリースの検討が進められています。OPNFVには40近くのプロジェクトが設けられていますが、デルは(a)ブランディングやコンプライアンスを担当するDovetail、(b)テストベットの仕様を検討するPharos、(c)テストツールを開発するQtip、NFVに対応した論理スイッチ/ルータ、(d)オーバレイの規格等を検討するOVS for NFV、(e)アプリケーションパーフォーマンス等を確保するフレームワークや標準APIを策定しているDPACCの5つのプロジェクトに参加しています。
日本でもデルは2015年1月に設立された次世代NSPコンソーシアムに幹事メンバーとして参加し、ベンダー各社とPoCなどに取り組んでいます。10月には当社が中心になって進めてきたクラウドコンピューティングテーマとするOSCAという研究会の活動スコープを、IoTやオープンネットワーキングにも拡大しました。デルはクラウドでのビジネスの経験を活かし、通信事業者のNFVの導入に貢献していきたいと考えています。
(文責・編集部)