「キャリアSDN」は、ITの領域とネットワークの領域の技術を融合させ、サービスや端末の多様化など環境の変化に対応できる新たなネットワークアーキテクチャーを創り出そうとするものだ。NECは、「データセンターSDN」「NFV」「SDNトランスポート」「統合運用管理」の4分野でキャリアSDNソリューションを展開、新時代の通信事業者のニーズに応えていく。
本日はNECが考える「キャリアSDN」――通信事業者のネットワークのためのSDN――をテーマに話をして参ります。
近年、通信事業者の端末やサービスの多様化に伴い、通信事業者のネットワークに新たな要件が求められるようになってきました。例えば、大量のトラフィックを発生させるスマートフォンと、数は多いがトラフィックは非常に小さいM2M端末が並行して普及していく状況に対応するには、ネットワークは高い柔軟性・拡張性を備え、かつ低廉なコストでそれを実現しなければなりません。
しかし、特定の処理に特化した専用装置で構築された現在の通信ネットワークではこうした要件を満たすのは難しい。キャリアSDN は、ITの領域で培われてきた仮想化などの技術をネットワーク領域の技術と融合させ、新たなニーズに応えるネットワークアーキテクチャーを創り出そうというものです。
SDNという言葉は、人によって意味する範囲が違っているのですが、NECでは、ソフトウェアで制御・構築されるシンプルでフレキシブルなネットワークとして広く捉えています。我々は、キャリアSDNは@「集中制御」とA「ネットワーク機能の仮想化(NFV)」の2つの要素によって実現されると考えているのです。
NECは、2008年1月にスタンフォード大学のClean Slate Programに参加しSDNの根幹の検討を開始、11年には世界初のOpenFlow対応製品を発表。加えて今年は世界に先駆けて実用化した仮想化モバイルコアネットワーク(vEPC:Virtualized Evolved Packet Core)を発表しました。
また私どもはOpenFlowのプロトコルを策定するONF(Open Networking Foundation)、NFVの標準化を行っているETSI NFV ISG、オープンソースでコントローラーの標準化を進めるOPEN DAYLIGHT Project、SDNの研究機関であるONRC(Open Networking Research Center)などの標準化団体・コミュニティに積極的に参画、SDNの普及促進に貢献して参りました。今年からは総務省の「O3プロジェクト」に参加し、国内5社共同で広域ネットワークのSDN化に関する研究開発をスタートしています。
すでに企業向けのSDN製品では実績が出てきており、私どものOpenFlowコントローラー/スイッチは通信事業者を含む100社以上に導入され、スイッチの出荷台数は2000台を超えます。
キャリアSDNの分野でも、導入に積極的な先進グローバルキャリア10社以上と実証実験など商用化に向けた取り組みを行っています。
スペインのテレフォニカ様とは来年7月のサービスインを目指しvCPE(Virtualized Customer Premice Equipment)の実証実験・開発に取り組んでおり、併せてvEPCソリューションの実験にも取り組んでいます。ポルトガルテレコム様とはデータセンターSDNソリューションの共同実証のパートナー契約を締結し、北米の大手事業者様とはvEPCのトライアルを行っています。アジアでは、NTTコミュニケーションズ様のクラウド基盤にプログラマブルフローを納入しました。さらにミャンマー郵電公社様にはLTE商用システムとしてvEPCソリューションを納入し、今年12月に稼働する予定です。
私どもは、通信事業者のニーズを踏まえて、@サーバーとネットワークのSDN化を実現する「データセンターSDN」、A汎用サーバー上でネットワーク機能を実現する「ネットワーク機能仮想化(NFV)」、Bソフトウェア制御で光/IPネットワークの効率的なリソース活用を実現する「SDNトランスポート」、CSDNの統合運用と管理の自動化、制御の最適化を実現する「統合運用管理」の4分野で、キャリアSDNソリューションを展開していきます。
SDNはすでに研究段階から実用段階に入っています。NECはこの分野での実績・経験を活かし、新時代の通信事業者のネットワークの構築に貢献して参ります。
(文責・編集部)