仁田 2005年から2006年にかけて、アンケートをベースにコールセンターの人材管理について調査を行いました。調査の背景には、(1)コールセンターは、近年、急激に就業者数が増加した職場であるにも関わらず、雇用・就業に関わる基本的な事実が明らかにされていないこと、(2)就業者の処遇には多くの課題があると言われており、労働研究の観点から実態を明らかにする必要があったこと、(3)米・仏・英など世界20カ国の研究者がネットワークを組んで、共通の枠組みを使って国際比較を行う共同研究の一環として実施する機会を得たこと――の3点があります。
アンケート調査は2段階で行い、主にコールセンターの有無を聞いた一次調査では335社が回答。そのうちコールセンターを持つ252社に対し、運用状況を掘り下げて聞いた二次調査を実施した結果、159社の回答を得ました。調査を通して感じたのは、従業員の構成が非正規雇用に予想以上に偏っているということです。フルタイムで勤務する正社員の比率は13%にとどまり、一方でフルタイム有期契約社員率は43%、パートタイムと合わせると有期契約社員率は75%に達しています。残りの12%は、派遣社員です。この傾向は、管理職やSVなどを除くオペレータに限定するとさらに顕著になり、正社員率はわずか6%という結果になりました。
――他国と比べてみても、日本はとくに非正規雇用の活用に偏っているのでしょうか。
仁田 今度、報告が発表された世界17カ国(日本と中国は含まない)の調査結果によれば、非正規雇用率の平均は29%で、日本は3倍近いです。この17カ国のうち、他に非正規雇用率が過半数を超えているのは韓国(60%超)とスペイン(50%)のみということからも、突出していると言えるでしょう。
もちろん、雇用形態の定義や意味が国によって異なっているという事情はあります。例えば、正社員率が100%と出たインドは、英語圏諸国のオフショア・コールセンターが多いので、実態は“他国企業の業務を請け負っているエージェンシーの正社員”ということになります。また、米国やイギリス、カナダは正社員比率が8割を占めていますが、基本的に法的な長期雇用義務がなく、日本の正社員とはイメージが異なります。
また、日本の場合は、コールセンター業務の多くをアウトソーサーが担っているという特徴があります。コールセンター業界に限らず、日本はアウトソーシングの文化が根付いており、コールセンターはその最たる業界のひとつだと言えるでしょう。