――消費者金融業界は、他の金融機関と比べると、この不況下でも順調に推移している印象があります。現在の市況をどのように捉えられていますか。
石田 確かに融資残高は引き続き伸びています。しかし、景気の低迷や競合の激化もあって、かつてのような成長は難しいのが現状です。実際に、バブル景気の時代から続けてきた大量出店・大量広告というマス・マーケティング手法の効果が薄れつつあります。新規会員の伸び悩みがそれを如実に表しています。
また、長びく不況の影響により、債権が不良化するピッチが加速しています。現状のままでは、利益に対し貸し倒れのコストが増える一方で、マス・マーケティング一本槍では販促コストも減らない。このバランスの悪さを解消することが当面の急務です。
――具体的には、どのような対策を取る方針ですか。
石田 まずはお客様のライフスタイルの変化に応じたコンタクト・チャネルの再編です。その拠点として、コールセンターの集約化を推進、昨年11月の東日本地区の総合サービスセンター開設に続き、今年7月からは西日本でも稼働を開始しました。そして、顧客満足度向上と貸し倒れリスクの軽減を同時に実現するためのワン・トゥ・ワン型営業手法「ナビゲート型営業」の推進です。現在、この2点を柱にした経営改革を進めているところです。
“人海戦術”からの脱却
センター統合でコスト競争力を強化
――総合サービスセンターの概要を教えてください。
石田 2002年7月現在、東日本は118席、西日本は117席、24時間365日体制で対応業務を行っています。また、Webサイトの申し込み窓口「サイバーショッププロミス」経由の顧客コンタクトもここで対応しています。現在、コール数は平均月20万件、サイトからのアクセスは同24万件に達しています。
――消費者金融業界では、大手を中心にコールセンターの存在をアピールする傾向が強くなっています。プロミスの総合サービスセンターと競合他社との違いを教えて下さい。
石田 新規申し込みから審査、与信枠の設定や拡大といった一連の融資業務を、1回の電話で完了させるワンストップ・コールが最大の特徴です。総合サービスセンター設置以前の当社や競合他社の場合、コールセンターはあくまでも申し込み窓口であり、審査業務は該当エリアの支店が行っています。これでは、結局は審査結果をコールバックしたりお客様に担当支店へ電話いただけるよう誘導しなければいけないケースが多い。総合サービスセンターには、審査権限を持つマネージャークラスの社員が常時ついており、お客様の要望に対し、即座に判断を下すことができます。また、仮にコールバックの必要が生じても、その手段や時間帯はお客様の要望通りに行います。もちろん、Eメールでの返答も可能です。
――自動契約機も相当数の設置が行われているようですが、非対面チャネルの拡充で人件費などの販管費は減少しているのでは。
石田 7年前に自動契約機を導入したときの有人拠点数は約450店。その数は現在も変わっていません。しかも、無人契約機やATM端末を管理する集中センターや不良債権の集中管理センターなど、マーケットが拡大するなかで新規拠点を相次いで開設しているので、この7年間で人件費はむしろ増えています。
有人拠点数が減らないのは、30数年間に及ぶフェース・トゥ・フェースでの接客による成功体験に引きずられていることは否めません。しかし、お客様の行動を詳細に分析すると、(ファースト・コンタクトで)有人拠点に来店いただくケースは全体の1〜2%程度です。来るべき調達金利の上昇局面に向けてコスト競争力をつけるためにも、ムダな部分を省いた新しいビジネスモデルを模索する時期だと考えています。総合サービスセンターは、過去の仕組みを抜本的に変える新機軸となるべき存在です。
――昨年、出資法の上限金利が29.2%に引き下げられましたね。
石田 将来的には、利息制限法の上限である18%程度での営業を余儀なくされることも視野に入れなければいけません。総合サービスセンターの開設は、迅速な顧客対応だけでなく、コストメリットを追求する意味でも避けては通れない道だったと考えています。今後、通信ネットワークの再編を実施すれば、通信コストだけでも年間9億円も低減する効果が見込めそうです。また、総合サービスセンターは今後さらに機能拡張する予定です。今秋には、アウトバウンドの督促業務をスタートします。さらに、現在グループ会社のネットフューチャーで行っているATMや無人契約機の障害や各種問い合わせに対応する業務も統合する方針です。お客様からのアプローチは、すべてサービスセンターで対応できるようにしたいと考えています。
――では、今後は既存店舗の統廃合を含めた顧客チャネルの再編成を進めるということですか。
石田 申し込み窓口としての有人店舗の役割は、フェース・トゥ・フェースでないとできない業務―例えば、カウンセリングなどの相談窓口としての機能に特化していきます。
すでに、今年4月には大幅な組織改革を行いました。これまでの全国8支社という営業体制を東西の2営業本部制に移行したうえで、全国を69のエリアに分け、東西それぞれの本部長直轄のエリア担当部長を配置。東西のサービスセンターも各本部長の指揮下に入りました。これにより、営業のフロントラインの業務効率化と2つの営業本部によるダイレクト・マネジメントが実現し、従来以上に意思決定のスピードが向上するとともにキメ細かいエリア・マネジメントが実現できつつあります。また、ある程度の間接人員の削減効果もすでに出ています。
データマイニングで顧客の傾向を探る
8階層のセグメントに順じた対応を実践
――内部的なコスト削減はかなり進んでいるようですが、貸し倒れをはじめとしたの外部要因に対してはどのような対策を考えていますか。
石田 それが、先ほど申し上げた「ナビゲート型営業」です。これは、従来の均一化したサービス提供に対し、お客様の“個”を重視したパーソナライゼーションを基盤とした営業手法です。
現在、お客様の傾向分析は、過去の取引経歴と類似ケースをマイニングすることで当てはまるパターン(属性)を8パターンにセグメントしています。その結果に合わせて、お客様それぞれの状況に応じたアドバイスや融資のご案内を行っています。
――証券会社などが採用している顧客属性に合わせたカウンセリング型の営業手法ですね。
石田 消費者金融の業界でも、この手法の確立は急務といえます。従来の消費者金融業界は、大量広告・大量出店をはじめとした人海戦術による新規顧客の獲得が唯一の経営モデルといっても過言ではありませんでした。しかし、今までの様なマーケットの拡大が見込めないなかでは、既存顧客をいかに囲い込むかが売り上げ・利益を維持するためのカギとなります。しかし、これは一口座当りの残高拡大にもつながり、不良債権化するリスクもある。そこで、お客様それぞれが置かれている状況を的確に把握して、与信枠や利息をコントロールしなければいけないのです。
――マイニングの結果を受けた顧客へのアプローチは総合サービスセンターで行うのですか。
石田 アウトバウンドでのセールスは、基本的に担当エリアの支店が担当しています。インバウンドによる与信枠の拡大の問い合わせは、顧客データベースをサービスセンターで参照することで属性は把握できますから、その場で相談に応じることも可能です。
銀行・同業者・異業種とのタイアップ
最大の武器「債権管理」ノウハウを提供
――消費者ローンの市場には、従来の信販会社や消費者金融に加え、既存の銀行や流通系銀行も乗り出しています。競合関係をどう捉えていますか。
石田 銀行系については、競合というよりも協業関係を築きつつあります。当社も、UFJグループと提携し「モビット」という無担保ローンの新ブランドを確立しました。
銀行各社は、無担保小口ローンの債権管理に関してノウハウがないのが現状です。当社は新会社でそのノウハウを発揮する一方、新たなユーザー層を獲得できます。また、それ以外にもリッチ、シンコウ、東和商事の3社が統合した新会社「ぷらっと」との業務提携など、アライアンスは積極的に行っています。
――多数のブランドを展開することで、かえってプロミス本体のブランド力が低下することは考えられませんか。
石田 当社の最大の武器は、小口ローンの与信と債権管理のノウハウを持っていることです。それを利用できるなら、何もプロミスブランドのみにこだわる必要はない、と考えています。むしろ、UFJグループのネームバリューによって、新市場の開拓をしたいと考えています。また、プロミスブランドによる新規開拓については、現在異業種との協業による展開を打ち出しています。現在は、携帯電話の販売会社と提携して、そこの会員向けにカード発行業務を展開しています。かなりのニーズが発掘できており、さらに可能性を探っているところです。
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